NPO法人イー・ビーイング
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考える農業

 今、日本のほとんどの農家は考えない。
 撒けば収量アップの化学肥料、害虫・病気は農薬で消えるし、除草剤により草もなくなる。
 楽に慣れた農家の人は、考えなくなる。特に稲作はひどい。

 世界の3大穀物は、米、小麦、トウモロコシ。日本は米以外は輸入に頼っている。
 しかし香川県に讃岐うどんがある。
 香川は瀬戸内気候で雨が少なく、小麦文化が生まれた。
 気候を知れば、作物が見えるというものだ。もう一度、各地の名産から遡ることが必要なのかも知れない。

 日本は全般的に雨の恵みはあるが、一方で病害虫の原因ともなっている。
 日本原産の野菜はウド、ワサビ、ゼンマイなど湿気を好むものが多い。
 しかし今、私たちが食している野菜は戦国時代から明治にかけて入ってきたもので、旬を無視したり、大量に作ろうとして寒ければ暖房やビニール囲いから、化学肥料・農薬の投入など、植物の生命力を削いでいる。
 これらは考えない農業の現状である。

 日本のように多様な気候や風土において、そこに合う農業が必要である。
 それが、Back to the Basic。
 その為には、自分の土地の地力を知ることが一番。
 お米なら全く肥料を入れずに何俵採れるか。それが1反2俵なら、そこが地力の原点となる。

 次に、自分は1反あたり何俵を採りたいかを考える。
 1反で15,000株を植え、420kgの収穫を目指すとすれば、1株28gが必要となる。
 そこで実験だ。
 米は千粒重がポイントで、黄金晴なら21gである。この重さの目標を28gにすれば、先ほど反収を上げるとすれば、1株の稲穂につく米粒を多くすればいいとなる。そうすると、1300粒ついていればいい。
 そこで肥料等の実験から、1300粒ついているものを見つけることとなる。そしてその1株を育てるのに6gの肥料投入をしていたのなら、15,000株なら90kgを投入すればいいとなる。

 化学肥料を大量に使用する農家では、反収12〜13俵になる。しかしここまで採るとタンパク質が過剰(7〜8%)となり、おいしくなくなるらしい。
 これをタンパク質5%に抑えようとすると、1反7俵が良いと分かる。この目標のもとに肥料計算が始まるのである。
 これだと虫に強いし病気も出にくい、台風が来てもまず倒れない、そして品質も良く付加価値も高くなる。

 いやいや、ちょっと待て。
 有機肥料を分解するには微生物が必要。化学肥料・農薬の田んぼ(借りた耕作放棄地等)には殆ど微生物が棲んでいない。つまり100%分解の計算を70%位と考えねばならない。そうすると、30%多めの投入が必要となる。
 こうした応用計算が山とあるので、農業は面白い。

 稲作は、健康な田んぼ、健康な苗、そして水平な地面づくり、つまり代かきに尽きる。
 田植えは、稚苗ではなく成苗で。
 しっかり育てても、刈り取りはピークをはさんだ3日間。(コンバインや乾燥機等のポテンシャルから各自計算)
 この3日間制約から、面積や立地に応じて早生、中生、晩生と複数の品種の組み合わせが必要だ。
 つまりコンバイン、乾燥機の能力から逆算して、田植えはスタートすべきなのだ。
 目から鱗というか、良い生産物の為にというスタートがあって、初めて人々から愛されるお米作りが実現できるのである。
 このようにプラン・ドゥ・シー・チェックを、まず春夏秋冬の大プランから工程に応じた様々な小さなプラン・ドゥ・シー・チェックへの分解が必要である。

 考えて考えて、試行して、失敗から学び、次の飛躍に繋げる。
 これが生命の循環をつくる農業、これが考える農業である。
 私たち現代人の挑戦すべき分野は、まさに農業にある。

(注)当該挨拶について、松下明弘氏の「ロジカルな田んぼ」より啓発され記述した。
原本を手に、それぞれが考える農業への志を共有化して欲しい。
沢山の松下氏が輩出することが、日本農業の新生を招くものと考える。

理事長  井上 健雄

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