蕗の芽や 梅を尋ぬる 一つづき (浪花)
今月はインセンティブについて考え、本来的に行動するとはどういうことか探りましょう。
一、イスラエルの保育園の親御さんです。
この保育園では、時間どおり子供を迎えに来る親が少なく、頭を痛めていた。
これは罰金が、負のインセンティブとなった例である。
二、4歳のお姉さんと2歳の弟。
両親が、お姉さんに弟のトイレのしつけを任し、弟をトイレに連れて行けばご褒美をあげるというもの。
お姉さんはしっかりやって、たくさんのご褒美となった。めでたしめでたしである。
いいプラスのインセンティブである。
しかしこの姉が褒美のために、弟にこっそりたくさんの水を飲ませたとなると、危なくなる。
三、これらのインセンティブには、まだ笑みを誘うものでもあるが、トーマス・シェリング『紛争の戦略』は、もっと恐ろしい。
奇襲攻撃や核戦争などに言及しているこの本のキーワードは、「コミットメント」。
わざと前もって選択肢を狭め、交渉を有利にしようとするインセンティブである。
中国の尖閣諸島対策(領海侵犯、射撃管制用レーダー照射etc)はこの手である。
日本(政府・防衛・外交当局)は、これを上回る戦略が、必要である。
もっと根本的なインセンティブがある、現在のアメリカを築きあげた。
1620〜1647年の日記をもとにしたウィリアム・ブラッドフォードの回想録『プリマス入植地』にその答えがある。
イギリスからメイフラワー号で新大陸アメリカに来た人々の話である。
最初はピューリタンとして敬虔な人々で原始共産制で運営していたが、生産性もあがらず、1621年厳しい寒さで、蓄えもなく半数以上の人が死んでしまう惨状があった。
リーダー、ブラッドフォードは、原始共産性を革(あらた)め私有財産(インセンティブ)を認め、家族の規模に合わせて土地を割り当てたのである。
ここから生産性が高まり、人口の拡大とともに資本主義国家、アメリカ合衆国の基礎ができあがったのである。
歴史は廻り、リーマンショックからこの制度への見直しに入りつつあるが…
私の考える本来的行動とはどうあるべきか。
その思いとして、冒頭の句をプレゼントした。
梅の花を尋ね歩き疲れて、ふと下を見れば、黒い土を破って萌えいずる蕗の薹。
梅ばかりじゃない、あぁ春はやっぱり来ているのだ。
蕗には薫りとある種の苦みがあり、この独特を食せば、春を身体に飛び入らせる心地するものです。
酒に合うんですよね…
仕事も同じことで、大きなプロジェクトばかりに目を奪われることなく、今ある一つひとつに情熱を注ぐ、そこに小さな発見と組み合せのクリエイティビティが面白いんですよ。
大事なことは、目の前のインセンティブに惑わされることなく、自分の生き方に責任をもち、そして何事にも好奇心を失わず、日々をしっかり楽しむことです。
それが「パフォーマンス」を生み「生きる」ということだと思います。
理事長 井上 健雄