NPO法人イー・ビーイング
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「クロックス」という驚き(1)

 私たちは、大きなリズムから小さなリズムまで様々のリズムの中に身を委ね生きている。
 大きなものは、地球が太陽の周りを回る公転リズムがある。これは365.3日で一周する。これが一年である。
 そして月が地球の周りを回る公転周期は27.3日。これが1ヵ月である。
 地球に最も近い木星は4つ大きな衛星があり、それらの自転周期は7の整数倍である。こうしたことから私たちの1週間があるのだろう。
 また地球そのものの自転周期は0.997日である。これが1日※1である。

 こんなリズムが宇宙や地球にあるのなら、そこに生存する生き物はそのリズムに沿って動いたり休む時計を持っているに違いない。
 英知による研究が進み、1936年ドイツの科学者エルヴィン・ビュニングが植物の中の「概日時計説」を発表した。
 そして私たちの体にも、脳の視床下部に時計があると発見されたのが1972年。
 視床下部は、健康を維持し体の働きを調整し、自律神経やホルモンを取りしきっている細胞の集まりであることが分かっている。

 そしてテキサス大学のジョセフ・タカハシが、ショウジョウバエに続きマウスの第5染色体にある時計遺伝子クロックを1997年に発見したのである。
 この年が時計遺伝子元年と言われる由縁である。
 と同時に時計遺伝子ビーマルワンが、そして第17染色体にあるPerが発見され、1999年にかけてサーカディアンリズム周期を調節するCry1、Cry2が発見されている。
 基本となる6つの時計遺伝子が発見されている。

①クロック  ②Bmal 1  ③Per 1  ④Per 2  ⑤Cry 1  ⑥Cry 2

 現在は20種以上の時計遺伝子が報告されている。

 これらの時計遺伝子が、人のサーカディアンリズム※2(24H)を正常に動かすことで、健康を保つことができるのである。
 時計遺伝子を統括する、朝・昼・夜の3種のネットワークがある。
 人は日の出とともに目覚め、朝日を浴び、朝を支配するE-boxを活動させ、交感神経機能を亢進させ、血圧・心拍数上昇など各臓器への酸素消費量に対応する。
 昼はD-boxで動き、夜はRREで就眠と、3つのネットワークが正常に活動する状態を健康というのである。
 夜には体は休息モードに入り副交感神経が活発になり、体温は最も低くなる。そしてメラトニン分泌量が増え、白血球やリンパ球が増え、免疫機能を高めるのである。
 この体内時計が狂うと、メタボリック症候群、高血圧、うつ病、骨粗鬆症、ガン、アルツハイマーなどを誘発させると言われている。

 私たちは時計遺伝子の働きを妨げずに、太陽・地球・月・木星など各種の大きなリズムに身を委ねながら、小さなリズムとして一日のサーカディアンリズムを組み立てることが、健康と充実した人生を齎してくれるのである。
 偉大なるクロックスである。

次回は「クロックスという驚き(2)」として、植物のクロックスに注目して論を展開する。

1日について、地球上に多細胞生物が誕生した10億年前は地球の自転周期は20時間で、5.5億年前のカンブリア紀は21時間と推定されている。
私たち霊長類は3500万年前に誕生し、その頃は23.5時間とされている。

サーカディアンリズムは、24時間周期で変動する生理現象。
サーカが約、ディアンが日で約一日を指す。
睡眠、覚醒のサイクルをはじめとして、血圧、体温、ホルモンの分泌などの変動リズムをいう。

理事長  井上 健雄

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