|
|
実りの秋の心得 |
9月のありがとうで私の好きな作家、立原正秋を紹介したが、10月の挨拶は、詩人の新川和江さんをお奨めしよう。
秋を始めるには最適である。少し長い引用を楽しんでいただきたい。
|
わたしを束ねないで 新川和江
わたしを束ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂
−略−
わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風
−略− |
秋の澄み切った空の透明感、
山、谷、平野を自由に吹き渡る風・・・
自由への希求、自尊の心、そして日々生れる心の成長を謳いあげる。
・・・あぁ、素晴らしい。詩っていいですね。どこかで切った張ったばかりの乾いた現代生活の人よ 心の栄養をつけませんか。
秋を絵画、音楽、読書、旅・・・
食欲だけじゃなく、天高く教養と人格の秋にと挑戦ください。
そうこう考えて10月は、人格陶治について一言。
一番いいのは、お師匠(メンター)さんを見つけてその謦咳に接することである。
勿論ダメな人間を見て、ああはなりたくないと思う反面教師は溢れているかもしれない。
そこが問題なんです。反面を学ぼうとしても妙にその反面じゃなく悪い面を身につけてしまうという神経細胞があるらしい。茂木健一郎氏によるとミラーニューロンというもので、鏡で見たことを再現させようとするらしいのである。(少し独断があり、彼はそうは言ってないかも知れませんが)
俗にいう、朱に交われば赤くなるというものだろうか。俗悪な本に囲まれた生活では高潔に生きろと言っても難しいように。
だから稲穂、風からスタートしたのです。
そこでもう少し踏み込んで実りの秋の心得として、「自分を見直すミラーを磨きましょう」が10月のテーマです。
そうだと言って鏡を見て、『あぁ、いい女だなあ…』、『いい男振りだなあ…』と詠嘆してはなりません。
ミラーに映すものは、自分の行動に対する評価です。『お〜、さすが!』『いつも教えられるなあ』なのか『またミスってる』や『下手やなあ』という他人の評価から自分を見つめ直すことがポイントです。
この読者のすべての人が前者でいらっしゃると思いますが、偶に胸に手を置いて反省して下さい。当り前のことですが、素晴らしい人こそいくつもの反省をしているものですから・・・
[本当は、優秀な人ほど反省するから優秀な人だと思います]
そう言えばハーバード・ウィリアムのハインリッヒの法則がありましたね。
簡単に説明する。彼は労働災害5,000件を調査し、1:29:300の法則を導き出している。つまり、1件の重大事故の背景には、29件の中事故があり、300件のヒヤリハットとした不安全行動があるとしたものである。
つまり組織内に「ヒヤリハット人物」がいたら、とめどなくその組織は不安全でリスクを抱えていると言える。まず善を伸ばす前に、悪は矯正するか、除くことが、大事である。
それぞれのヒヤリハットの一文として参考の上、前進しよう。
前進とは、仕事が高く評価され、結果的に社会的ソリューションとリターンして結びつくことである。
理事長 井上 健雄 |
|