Land-Eco土壌第三者評価委員会
Land-Eco 土壌第三者評価委員会
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土壌研究会News5 (4)
菅原先生
 それでは少し時間がありますので、会場からの質問を受け付けたいと思います。質問がある方は挙手をお願いいたします。
質問
 久保先生からお話いただいたバイオレメデーションについて、微生物を培養して土の中に送りこみ、どんどん栄養を入れていくと、土壌汚染はきれいになると思いますが、そこには今までいなかった微生物がたくさん存在することになります。土地そのものが持つ特性が変わってしまう中で、本当に有効に使えるようになるのか、あるいは違った有害性がそこから発生してくるようなことはないのか、検証されているのでしょうか。
 また、微生物の量や浄化期間のめやすなど、技術的にどの程度まで進んでいるのでしょうか。
久保先生
 そこにいる微生物を活性化させるだけの場合と新たに有効な微生物を入れる場合、また栄養塩を入れない場合と入れる場合とでは、効果は全く変わってきます。ですから短期間で最大限の効果を発揮しようと思うと、研究の紹介でも申し上げたように、有効な微生物を入れて、C/N比を管理することが重要です。ただし今、環境省や経産省では環境影響を考えて、汚染がなくなったときに微生物がどのような挙動をするかというところまで注目し、確認しています。我々は汚染がなくなった段階で検出限界以下になることを証明した菌を使っています。
 一般的に良い土壌と言われているものは、1gあたりに菌が10億個くらいです。バイオレメデーションでは10億個/g土壌までは入れなくても良いですが、1000万〜1億個/g土壌前後入れるとかなり効果が出てきます。
 環境回復指標として、最終的に周辺土壌と同じような微生物相になることを求めていったらどうかという提案をしていきたいと思います。
質問
 微生物は日本で探すのでしょうか、海外で探すのでしょうか。
久保先生
 我々は基本的に日本国内で取ってきたものを使っています。色々なノウハウがありますが、微生物の多いところから取ってくるのがひとつと、汚染土壌から取ってくるのがひとつです。例えば甲子園球場の土は、鳥取県の結構いい土を入れていて、微生物が多いです。
質問
 これが有効だという微生物をどこかに保存したり、培養できるようなプラントがあるのでしょうか。
久保先生
 我々にとっては菌が宝物なので、保存をきっちりしています。大学では-80℃で保存しているのと、凍結乾燥で保存しています。培養するときは、一緒に共同研究している会社のタンクでやらせていただいています。
質問
 4月1日からの改正法で、自然由来だからといって、喜べなくなっています。何とかもう一回、自然由来はそのようなものじゃないと言えないのでしょうか。
 たとえば自然由来だけれど汚染ですよということになると、資産価値が下がりますよね。また自然由来の汚染がある土地で汚染土を残してマンションを造った場合、当然、重要事項説明で「自然由来ですが汚染土が残っています」と説明をしないといけないですよね。そうすると買う人がいなくなるという問題も出てきそうです。その辺りが非常に悩ましいのですが、先生方のお考えはいかがでしょうか。
嘉門先生
 旧法では自然由来の汚染は対象外でしたが、搬出する際はきちんと処理しなければなりませんでした。新法では対象になりましたが、搬出するときに問題だと言っているのであって、健康被害のおそれがなければ何もしなくていいんです。ですから実質的には旧法と同じです。
 例えば温泉でも、自然由来の砒素を100倍くらい含んでいる温泉がいくらでもありますよ。風呂に入ったら必ずお湯が口の中に入りますが、だからといって別に何も気にすることはないのです。
増田先生
 自然由来の汚染があると知っていれば、当然きちんと情報を出さなければ責任を問われると思います。知らなかったことで済ませられないでしょうかという相談も実際にあるんですが、それをやったら後が大変です。本当に知らないのは仕方がないですが、分かった以上は必ず情報を出さないといけないです。
質問
 人の健康に関わる有害物として扱うと法律で決めたものを、もともとあるのであればやむを得ないというのはどうかと思います。また、運んだだけで健康に被害があるのでしょうか。
嘉門先生
 掘削して動かすということは、人為的にリスクを拡散させているわけですから、それはきちんと管理しましょうということです。もともとある土地は、日本の国土がそれを含んでいて、我々がそういう土地に住んでいるだけです。それを浄化するのは不可能です。
菅原先生
 この法律の主旨のひとつは、汚染物を拡散させないようにしようということにあるのではと思います。嘉門先生、そのあたりをもう少し補強していただけますか。
嘉門先生
 ゼロリスクを求めて汚染した土を掘削して運び出す事例が多いのですが、法律を作る側としては、それらの土を本当にきちんと処理してくれていますか、という懸念がものすごく強いです。
 改正土対法ができる前に、3年ほどかけて実態調査をしましたが、ほとんど情報が得られませんでした。推定で年間300万tくらい汚染土が処理されているのですが、法律にもとづかず自主的に処理したのが全体の92%です。処理量自体も本当にそれだけか分かりません。
 そこで汚染土を適正に、厳重に管理しましょうというのが今回の法律改正です。
菅原先生
 ありがとうございます。それではそろそろお時間もなくなってきましたので、最後に一言ずつ、まとめのコメントをお願いします。
久保先生
 やはり最終的には生物で、あまり人中心的でもよくないと思いました。環境回復や生物影響に関する様々な指標を今後、法律の中に加味したら非常によくなるのではないかと思いました。
増田先生
 先ほどの議論は、土対法自体が不十分じゃないかという議論に繋がると思います。汚染土壌に曝露しなかったり汚染された水を飲んだりしなかったらいいじゃないか、という考え方でこの法律を作っていることに本当の問題があるわけですが、これはすぐには解決できないと思います。いずれにせよ、こういうことに関心を持って議論をすること自体が非常に有益なのではないかと思います。
川地先生
 今後、土地所有者の方々にとっても我々にとっても、非常に悩ましい事例が増えてくるのかと思いますが、第三者評価により解決に寄与できればと思います。
嘉門先生
 ダイオキシンの危険性については、最近は以前ほどあまり言わなくなりましたね。これは、環境ホルモンは大して問題ではないということが大体みなさんの常識になった結果だと思います。
 要するに、土壌汚染がどのくらい危険なのかをよく理解できるようになれば、ほどほどの対策に落ち着くのではないかと思います。リスクコミュニケーションがうまく進めば、やるべきところはやらないといけないし、そうでないところはむやみにやらなくてもいいということになるのではないかと思います。ですから、こういった場でみんなで勉強することが結果的にいいのではないかと思います。
菅原先生
 法改正にはいろいろと課題もあります。例えば今後、ブラウンフィールドが増えるのか減るのか、土地の売買がどうなるのかなど、注視していきたいと思います。すでに法律の及ぼす影響が広がり始めている中で、第三者評価委員会がお役に立てればと思っております。また、こういった議論の機会をもう少し頻繁にもてればと思いました。
 本日は、シンポジウムにご参加いただき誠にありがとうございました。
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