Land-Eco土壌第三者評価委員会
Land-Eco 土壌第三者評価委員会
Land-Eco土壌第三者評価委員会
土壌研究会News5 (3)
菅原先生
 それでは続きまして、第3クール「豊洲の土壌汚染問題」に移ります。まず川地先生、ご講演やシンポジウムの最初の発言で、何か補足いただくことはありますか。
川地先生
 この事例は、我が国における大々的な環境修復の事例として、これからの手本になり得る事例だと思います。多少時間をかけても本当に必要な対策をすれば、他の事例にも波及するのではないでしょうか。日本でもリスクベースの対策をしようという掛け声はありますが、実際はなかなか難しく、一律の対策になっていました。それを少しグレードアップするいいチャンスではないかと、注目しています。
 そのためにはやはり、公正な評価に基づいて対策がなされることが重要ですが、現状ではややクローズな状態ですから、周りの疑惑を招いてしまっている気がします。もう少しオープンかつ信頼性のある議論の場があれば、リスクコミュニケーションもうまくいくのではないかと思います。
菅原先生
 特に問題になっているのはベンゼン、砒素、シアンで、微生物による浄化が計画されていますが、久保先生いかがですか。
久保先生
 ベンゼンは比較的、分解しやすいですから、400ppm程度であればきっちり管理すれば浄化できると思います。
 私が心配なのは、浄化された後、環境回復がなされるかということです。例えば琵琶湖の微生物を分析してみると、東京湾が10億匹/g土壌に対して、琵琶湖の南湖では銅が多く、6000万匹/g土壌もいません。そういった汚染物質を取り除いた後、本当に微生物が戻ってきて、植物が生育できるところまで環境が回復するか。そのような第三者評価や認証があれば良いと思います。
菅原先生
 これに似た案件は関西ではないでしょうか。
嘉門先生
 ガス会社の跡地はみんな同じです。ベンゼン・シアンはよく出てきます。
菅原先生
 その中で、この豊洲が特に問題になっているのは、そこに市場を移設するということがかなり大きいと思います。それならもっと別の用途に使えばいいとも思うんですが、その可能性はないでしょうか。
川地先生
 確かに反対される方の多くは市場の移設を問題としています。今の築地を営業しながら改修できないかという意見もあって、東京都も検討したのですが、とても不可能だという結論になっています。築地を売ればかなりの資金が調達できますから、財政的にもいいという考えだと思います。
 いずれにしても、食品を扱うんだからだめだと思考を停止しないで、食品を扱うのにふさわしい対策やリスク管理はどの程度か、敷地全体が同じでなくても良いのではないかなど、もうすこし柔軟に考えれば違った解決策が出てくるのではないかと感じています。
増田先生
 移転を強引に進めた場合には、取消訴訟や差し止め訴訟が起こる可能性が高く、そうなると移転はなくなる可能性が高いと思います。
 先生方のお話を伺っても合理的な対応をすれば使える土地ですから、そのような対立に持ち込まないで、リスクコミュニケーションをしながら実現するという地道な活動が必要ではないかと思います。
 この件は政治が絡んでいますので、大きな声で言った方が勝つという雰囲気になっているかと思いますが、そろそろ落とし所を考えておくべきだと思います。そのためにはやはり、地道な交渉や話し合いが必要です。
嘉門先生
 前半の講演で、浚渫土は土壌汚染対策法の対象かというご質問がありましたが、浚渫土は対象外です。ただし、浚渫土で埋め立てた土地は対象になります。
 平成19年の土壌環境施策のあり方懇談会で、改正にあたって特定区域を設けてはどうかという議論がありました。例えば海水にはふっ素やほう素が含まれており、特にほう素は環境基準の10倍も含まれていますので、沿岸地域でこれらが基準値を超えているのは珍しいことではありません。先ほど申し上げたように、バックグラウンドで砒素や鉛が環境基準を超えているところも非常に多いです。そのようなところは特定区域として、汚染物質を摂取するリスクが低ければ浄化する必要はないとしてはどうか、という考え方でした。
 結局、特定区域の考え方はなくなったのですが、公的用地で一般の人は立ち入らないとか、地下水を飲まないところは要措置区域ではなく、形質変更時要届出区域にするという考え方になっております。
 また対策も含めてリスク評価をしたら、必ずしも法で提案されている対策方法でなくてもいいのではないかという議論を環境省と致しました。その結果、ガイドラインでは法で提案した対策法に準ずる(同等以上の効果を上げる)工法も認めており、一歩前進しました。
 ところがそれを評価するのは環境部局で、対策技術の専門家がいらっしゃらない場合も非常に多い。ですから第三者が厳正にリスク評価をした結果、大丈夫と評価されたらその技術を認めたらどうかと環境省の土壌環境課長に提案したんですが、事例が集積されて工法が認識されてくれば認めましょうとのことでした。今のところは認められるのは難しいですが、リスク評価を制度化してリスクコミュニケーションでご理解をいただけるようになれば、非常に合理的な対策ができるようになると思います。
増田先生
 汚泥は産業廃棄物になりますので、一般的には中間処理をした上で最終処分します。ただそこに汚泥以外の土などが混じっている場合や、基準値を超えたものが混じっている場合もありますので、処理方法にはいろいろなバリエーションがあります。浚渫汚泥もそうなると思います。
嘉門先生
 浚渫汚泥は廃棄物処理法でいう建設汚泥ではありませんが。
増田先生
 それがややこしいところなんです。普通の汚泥と違って土になるのですが、廃掃法の対象にも土対法の対象にもならない土が随分あります。ちょうど今、ガソリンスタンドの跡地で汚泥の混じった土壌が出てきた案件を担当しているんですが、汚泥が何パーセント以上だと廃棄物で、何パーセントまでは単なる土など、意外に扱いが難しくて、単純な浚渫汚泥はほとんどありません。どの法律でも規制できないまま、どんどん捨てられているケースも結構あります。
嘉門先生
 基準値を超えて有害物質が含まれている建設汚泥は、廃棄物ではなく汚染土壌に分類されることになっていますね。
増田先生
 一応そういうことになっているんですが、限界事例もよくあります。きちんと線を引こうという話もあるんですが、検査結果のデータを出してもどこから採取したかによって違うデータが出たりするので、現実には現物を見ないと分からないんです。最終処分場では、ひとつのデータを見て受け入れたら、後からどんどん違うものが来るということが実際にあるそうです。非常に分かりにくい扱いとなっています。
菅原先生
 都道府県によっても扱いが違うのでしょうか。
増田先生
 都道府県によっても違います。越境して運ばれている事業者はずいぶん困られていますので、もう少し整理したほうがいいと思うんですが。
菅原先生
 いろいろな事例を積み重ねていく必要がありますね。
<前へ  1  2  
3
  4  次へ>