捨てて強くなるか、もっともっとか 【10月】
2022/10/6(木)
昔、むかしから現代にいたるまでの長い歴史の中で、三つの事例を考えてみましょう。
(ちょっと大げさですかね?)
(一)昔むかしから。
今から5,200万年以上前に、ウマの先祖のエオピップスという動物がいた。
それは、前肢4本の指、後肢3本の指を持っていた。
この指があれば、物をつかんだり、樹上にも登れるだろうが、エオピップスは中央の1本指だけを発達させたのである。
つまり、蹄(ひづめ)を手に入れたのです。
獰猛な肉食動物から逃げる足の為に、他の指を捨てたのです、
この例は、ダチョウも同様です。
飛ぶことを捨て、草原を速く走る足と肉食動物を蹴散らす脚力を発達させたのです。
(二)何千万年も前の戦略を現代にも取り入れて成功している企業。
スターバックスです。
スターバックスは、1971年シアトルに誕生しました。
その時の店名は、スターバックス・コーヒー・ティー・アンド・スパイスというものでした。
店内で、ホットドッグやパスタ等も出していた為に、コーヒーの香りを消してしまう猥雑な軽食屋となり、売上も低迷し、閉店の危機に…
そこで、コーヒーとその香りを中心に、他の品揃えを捨てたのです。
今や、コーヒー文化との親和性の高いSDGsの取り組みを強化し、フェアトレードや、フォレストアライアンス(RA)やウツ(UTZ)社会・環境に責任を持った生産・供給の為の世界プログラムなどに力を入れている。
こうしたことが、スターバックスの文化を高め、コーヒーを軸に一つのカテゴリーを築き上げたのです。
(三)アメリカのGE
現代のGAFAを凌ぐ、アメリカを代表する企業です。
このGEでは、1980年代から20年間トップに君臨したジャック・ウェルチが、アメリカに解雇と整理ブームを惹き起こし、会社を成長させたのである。
彼は、会社の建物は残すが、人間のみを解雇で放り出す「ニュトロン(中性子爆弾)・ジャック」と呼ばれた。
彼は業界で1~2位に入らない企業は止めると宣言し、大整理を行った。
強いものに集中するのだから、(一)や(二)のようにも思える。
次に、この天才経営者のあとに、CEOに就任したのは、ジェフ・イメルトであった。
彼は、称賛され続けるために、売上拡大の為のM&Aによって、規模・コスト・複雑さを拡大し続け(GEキャピタルへの依存を高め続け)た。
イメルトは、ウェルチ時代から売上げ60%の拡大、利益を倍増させたのである。
しかし、イメルトは大きな社会事象にも直面している。
9.11、エンロン事件、原油高騰、住宅バブル崩壊…
この事象がGEの弔鐘となったのである。
これら事象に対して、規模だけなら整理して切り抜けられたが、イメルトは金融を中心とした会計力を駆使し、利益を上げ続けることを選んだ。
このイメルトの後を、GEのヘルスケアのCEOだったジョン・フラブリーに任されたのである。
二人の称賛された成績の後には、何のレガシーも残されていなかった。
大きな社会事象の影響から、拡大基調の流れが縮小基調に入ったことに対し、十分な手術の手が打てずに、フラリーは1,400億ドル(日本円で19兆以上)の市場価値を失ったのである。
エンロンの2倍以上で、リーマン・ブラザーズの損失さえ小石のようである。
自然や社会情勢について、基本的な変化がない限り、イケイケドンドンで成功するが、ひと度変化に遭遇すると、大きな齟齬をきたすものである。
かつて白亜紀に全盛を極めた恐竜は、地球は一つの大陸で、気温は高く、CO2濃度も高く、植物は巨大化し、それを食べる草食恐竜も巨大化し、それを食べる肉食恐竜も巨大化したのである。
しかし、白亜紀の終わり頃に、地球はマントル流によって分裂し、大陸移動を始めるのである。
そして山ができ、雨が降り、川が氾濫する変化の時代となって、ユカタン半島への大隕石とともに、
大型化時代は終焉を迎えたのである。
現代社会はある意味でこれらに匹敵する大変革期に入ったのである。
答えは、小型化で自分の強みを発揮できるポジショニングを磨くこととなる。
それはある意味適切な捨て続ける戦略こそが永遠の課題となる。
我がNPOもその未来に進んでいる。
これは、論理の飛躍でなく、壮大な未来のための一歩なんです。 ご一緒に、未来に進みましょう。
理事長 井上健雄