ゲーム・チェンジ 【4月】
2022/3/31(木)
2月の花は、樹の花が多く、梅、木蓮、寒椿…
そして3月の挨拶も桜…と上ばかり見ていることが多かった。
4月にもなると、下を見て歩くべきである。
芝生やちょっとした野原を歩いていると、薺(ナズナ)や、繁縷(ハコベ)、ホトケノザなどの春の七草など、いろいろ小さな花々が、ちょっと気取って咲いているではないか!
これから萌えいづる草花を楽しみに過ごそうではないか!
過日、日経ビジネス(R4 2/18号)に、脱炭素経営トップ70社ランキングがあった。
「脱炭素」という巨大ゲーム・チェンジの荒波を、乗り切る企業70社が示されている。
トップ3は、日本の超一流企業とされる。
1.トヨタ自動車(モビリティ)
2.花王(消費財)
3.日立製作所(社会インフラ)
(主になポイント)
・トヨタは、2030年に世界でEV350万台販売という野心的な大目標を打ち出した。
・花王は、アタックZEROに「バイオIOS」基材を用いて最小限で最高の品質を実現。
・日立は、重点をデジタル化と脱炭素に絞り込み、 社内炭素税とも呼ばれる、インターナル・カーボン・プライシング(ICP)を導入し、昨夏5,000円/tとしていた炭素価格を15,000円/tまで引き上げている。
どれも、それぞれの企業にとって野心的で、大きな目標へのチャレンジであるが、これで本当に今までやってきた事業のゲーム・チェンジになるのかは、疑問です。
ゲーム・チェンジとは何であるかの2社を記します。
フィンランドの石油会社ネスラ社を考察する。
同社は1948年創業の石油会社であった。
原料を国外に頼る小国のエネルギー会社は、原油価格などに振り回され、業績は安定せず、いつも破綻の危機にあった。
そこで、CEOのピーター・パナッカーは、ネスラ社を2007年より再生燃料へシフトすべく大規模投資を決意したのである。
しかし当時は、市場も投資家も従業員までもが、戦略に疑問を持ち、厳しい状況にあった。
それでもピーター・パナッカーは、脱炭素の流れから、再生燃料へのシフトに命運をかけたのである。
4万軒以上のレストランの廃食油や、動物油などから原料を調達し、世界の3つの工場で再生燃料の生産を軌道に乗せたのである。
SAF(Sustainable aviation fuel 持続可能な航空燃料)を強化し始めて、空港に精通する専門家を新たに採用し始めたのである。
2021年8月現在には、同社の株をフィンランド政府やESGファンドが、71.6%まで保有するまでになったのである。
そして、SAFの割合を50%から、100%利用までめざしているのである。
石油会社が、石油事業をアメリカやロシアに売り、再生燃料会社になり、また、SAF以外には廃プラスチックのケミカルリサイクルへの注力を開始している。
サプライチェーンの強化の為に、各種回収会社との提携や買収などにより、回収ネットワークを世界中に張り巡らそうとしている。
つまり、原料の石油を買って売るビジネスから、廃油等の再生燃料化ビジネス、脱炭素ビジネス会社へと、大きなゲーム・チェンジに成功したのである。
同様に、石油会社でグリーン敗戦したデンマークのオーステッドは、洋上風力発電の世界最大手にまで変身を遂げている。
「脱炭素」と言った時、それは、脱既存ビジネスになることも厭わない覚悟がいるのです。
こういう意味で、日本の脱炭素経営は、ゲーム・チェンジになっていない。
理事長 井上健雄