恐るべきテスラ 【6月】
2021/8/6(金)
(作成 R3年8月6日)
2003年に設立されたテスラは、2021年7月1日の時価総額を、約22兆2,300億円と発表した。
一方、1937年創業のトヨタ自動車の時価総額は、21兆6,532億円(2021年7月28日終値)。
創業わずか18年のテスラが、巨象トヨタより優位に立った。
しかるに、テスラの2019年の車の引き渡し台数は、約36万7,500台。
トヨタは、1,074万台なんです。
販売台数で3.4%に過ぎないテスラが、何故そんなに高く評価されているのだろう。
世界は、未来を見つめ、EV革命(注)の旗手テスラを選んでいるのです。
私が思うに、テスラは自動車というカテゴリーを超えて、コンピューターに車輪がついている、というイメージです。
つまりテスラの特徴は、インターネットでクラウドにつながり、2ヵ月毎にソフトウェアがアップデートされることです。
その都度、機能をアップするのです。
例えば、シカゴを大寒波が襲った時、テスラは事前に気象予報を察知し、充電効率が落ちないシステムのアップデート情報を発信したのですよ…。
このように、ソフトウェアのアップデートだけでなく、ハードウェア、半導体の交換も定期的に行っているんです。
これらの点検・交換なども、ディーラーはありませんが、ウーバーのようなアプリを備えていて、利用者は近くのサービスパーソンを呼べばいいんです。
燃費向上もブレーキソフトを変えることで、成果が出るんです。
その上、私がもっと凄いなあと思うのは、自動車メーカーなら保有しているテストコースも、販売店もないローコスト経営なんです。
テスラは、公道を走っている100万台に搭載されているカメラやセンサーのデータを取得し、自社のサーバーに保存するプラットフォームを持って、研究・改善を進めているのです。
広報・宣伝についても、ハリウッドのセレブや、有名スポーツ選手などが競って買ってくれるので、何も要らないのです…少しおいし過ぎますが…
これらの重大な変化は、「車は、移動のためのサービスの一つとなる時代」に入ってきているということです。
この時代が、MaaS(マース)と呼ばれるものです。
Mobility as a Serviceです。
MaaSという言葉は、フィンランドにあるMssS Global社のサンポ・ヒータネンCEOが提唱しているものです。
なぜ、フィンランドという小国が、こうしたサービスに先駆できたのか?
自国に自動車メーカーがないため、車を買う度にお金が外国に出て行ってしまう。
そこで、国がMaaS事業を支援し、世界初のMaaSのプラットフォームを作りました。
月額499ユーロで、鉄道やバスといった公共交通機関が利用放題、その上、タクシーやレンタカー、シェアサイクルも基本無料。 アプリで交通手段を横断して利用も予約もできる。
これは、音楽のプラットフォーム「Spotify」のようなものです。
世界の人々が、この新時代の先陣争いの覇者の一人として、テスラを見ているのではないでしょうか。
恐るべしテスラです。
自国に闘うリソースのない国が、知恵で次世代型移動サービスを生み出したのです。
私たち日本はどう戦い、私たちNPOはどうするべきか?
こうした疑問に満ちた月日を過ごせることは楽しくチャレンジングなことです。
(注)EV革命(Electric Vehicle)自動車業界100年に一度の革命で、電気自動車の時代を迎えていること。つまり、エンジンからモーターへの技術革新を意味する。
理事長 井上健雄