「食」に至りつくまでのムダ 【5月】
2021/5/12(水)
あらゆる動物は、植物あるいは植物を食べる動物を食べ、生きている。
この食物連鎖が成り立つもとは、植物だけが太陽光から炭水化物(糖類)を合成する能力を持っていることにある。
この炭水化物は、あらゆる動物の基本エネルギーになっている。
酸素の代替がない様に、植物エネルギーの代替もない。
植物エネルギー形成のために、地球から14,960万㎞離れた星からの太陽光こそが生命の源となっている。
太陽から地球に届くエネルギー量は、発生エネルギー量の10億分の1にも満たない。
その上、光合成に使われているエネルギーは、その1%にも満たない。
「食」に至りつくまでのムダ対策1
植物が、太陽光から効率的に糖分を増やす能力を強化することが出来れば、増え続ける人口や気候変動にも対処能力が上がることになる。
太陽光から植物が糖分を合成する能力を高める研究に活路を見いだすべきである。
ビル・ゲイツが支援するイリノイ大学や、さらにその上をいくエセックス大学では、タバコの収穫量を27~47%増やすことに成功している。
太陽光から14,960万㎞離れた太陽光の効率利用により、植物の糖分を増やすという光合成の効率upが、静かに進行しているのである。
「食」に至りつくまでのムダ対策2
私たち人間の住める居住可能地域の50%が農地であり、その中の80%が牧畜に使われている。
人口増加が進む現在、居住可能面積の効率的使用は不可避である。
人間の利用できる土地の1/4が、鶏200億羽、牛15億頭、羊10億頭を飼育する為に使われている。
牛肉1kg生成には、15,000ℓの水が必要だが、小麦1kg生成には、1,500ℓの水で十分である。
つまり、動物肉食から植物食への転換も重要である。
動物を殺す残酷さだけでなく、野生動物にはパンデミックの菌を持つものもある。
食用作物の30%を家畜が食べていることは、増大する人口への障害ともなっている。
その上、食肉生産には、世界の水使用の70%が使われている。
ひとつのソリューションとして、培養肉へ移行すれば、こうした不合理は随分正されることになろう。
成牛を育てるのに、海洋に駆逐艦を浮かべられるほどの水が必要なのだ。
食肉生産の為の温室効果ガスは、排出量の14.5%を占めているし、森林破壊の原因でもあり、大量の種の絶滅等を引き起こしている。
「食」に至りつくまでのムダ対策3
スマート・テクノロジー(数万個のカメラ、センサーでモニタリング、ビッグデータからのAI学習等)を駆使した農業へのチャレンジも実績を収めつつある。
スマート農業は、露地栽培に比べ、一定面積への作付量が40倍、収穫量は350倍などの成果を出しており、水の使用量も1%以下に抑えることが可能だ。
「食」と食卓の移動距離も短い都市における垂直工場の持つ可能性は高い。
「食」に至りつくまでのムダ対策4
この貴重な作物の輸送中や店頭に出された時、あるいはストック時などに、腐敗等の劣化を防ぐための、植物由来100%の材料を開発する人工のメカニズムも普及し始めている。
この仕組みは、野菜や果物が生来的に持っている皮の研究・利用にある。
皮は、「角皮素」と呼ばれるもので、一番外側の層で水を逃さない脂肪酸でできた蝋状のものである。
この角皮素を植物由来で人工的に作り、植物の寿命を長く保てたり、おいしさの日数コントロールにも役立てられるようになってきている。
こうした4つの対策も皆様の念頭に置いていただきたいと思います。
これらのことに人々の理解が深まれば、新技術への配慮が高まり、新技術の実装化により、動物へのウェルフェアや、人々の健康に資するものになりそうです。
ある意味「食品ロス削減」の根っこの課題でもあると思います。
理事長 井上健雄