日本の二月を楽しむ

2019/2/1(金)

久方の 天の香具山 この夕べ
    霞たなびく 春立つらしも    柿本人麻呂

 もう少しすると「春立ち」が見えますよ。
 春が立つと、麦も稚芽(わかめ)を出して、茶色の畑を緑に変えてくれます。
 但し、まだ北風が強く温度も低いので、もう少しガマンしなさいよと「麦踏み」をするのです。
 今は運動靴が多いのですが、本当は地下足袋がい~んだ。
 一歩また一歩とゆっくり麦の根元を踏みしめてあげましょう。
 このことで、麦の穂の出方を均一にし、生長にもいいんですよ。

 春立ちを眺め、麦踏みをしていると、もう梅の便りです。

よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花
      あかぬいろかは 折りてなりけり    素性法師(そせいほうし)

 なかなか浪漫的でいいですね。
 こうした歌を貰う女性の艶やかさ、美しさも目に浮かぶようです。
 そして野山に出かけると

小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
緑なす繁縷(はこべ)は萌えず 若草も藉(し)くに由なし
しろがねの衾(ふすま)の岡辺 日に溶けて淡雪流る
あたたかき光はあれど 野に満つる香(かをり)も知らず …
                    千曲川旅情の歌 島崎藤村

 芹(せり) なずな 御形 はこべら 仏の座 すず菜 すずしろ これぞ七草。
 これらが野山に里に緑を出しはじめると、今度は「耳」が淋しがりはじめます。
 そこで…

うぐいすや 梅踏みこぼす 糊だらい    与謝蕪村

 見る情報を満喫すると、香りを求め、そして鶯の鳴き声を求める。
 鶯の鳴き声から、この景色が森とした静寂まで表現しているって、いいですね。

 四つの歌で早春を味わいましたが、日本って本当いいですね。
 和歌や詩や俳句で二月一杯に楽しんでみました。
 年の始めぐらい、優雅と暮らすものでしょう。
 一度、歌会でもしましょうか!

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