NPO法人イー・ビーイング
NPO法人イー・ビーイング
Great Organizationへの道(1)

 今回から、私がエコロジー研究会で講演した内容を数回に分けて掲載し、私たちの活動の一部をお知らせしたいと思います。

1.Built to Last − 最上を築く −

 前回は、「ビジョナリー・カンパニーへの飛翔」というタイトルで話をしました。
 皆さんには、飛行機の操縦席に座っているという思いで聞いていただくと臨場感が出るかと思います。

 前回のおさらいをしましょう。
 まず、「Built to Last(最上を築こう)」という話をしました。レジュメに副題として「点滴岩をも穿つ」としております。企業がたゆまぬ努力を続けることによって、最上の会社ができあがるということを申し上げました。
 そして、ビジョナリーカンパニーとは、どういう会社なのかをグラフで示しました。

ビジョナリーカンパニーの株価

 1926年から1990年のパフォーマンス(株価)を見ると、ビジョナリーカンパニーは、一般の市場平均に比べて大体15倍高いです。比較対象企業に比べても、ものすごく伸びています。

 その時に「12の神話」を否定しました。その三つを申しあげます。

  1. 「ビジョナリーカンパニーには、素晴らしいアイデアがあったのだろう」です。でも、そういうことはないのです。最初は、たいしたアイデアなどありません。でも、歩いていく中に徐々に出来上がっていくのです。
  2. 「偉大なカリスマがいたからだろう」と言いますが、カリスマは、基本的にみな潰れます。偉大なリーダーにはなれますが、成功を収め続ける経営者はなかなかいません。例えばダイエーの創業者である中内さんはカリスマでしたが、終わりは惨憺(さんたん)たるものでした。カリスマというのはビジョナリーカンパニーが目標とする経営者ではありません。
  3. 「ビジョナリー経営者は先見的である」これも違います。確かに、少子高齢の時代を見据えて何かをするというのは先見ですが、先見だけでは答えになりません。それよりも、きちんとビジョンを書き上げ、行動に結びつけていくことが大事です。

 最近、私の印象として、我々は、いくつものバベルの塔(間違った概念)に取り囲まれた中で、間違った意思決定をしているように思います。成功の為には、まずこのバベルの塔を潰すのがポイントです。

The Hartwell Paper

 その一つとして、Time to Ditch Kyotoについて検討を加えましょう。
 京都議定書は確かに良くできた仕組みですが、基本的に京都メカニズムという取引によってCO2を削減しようという仕組みです。例えば、日本にも58億トンのAAU(排出枠)が割り当てられています。森林の吸収量が2.4億トンありますが、事業活動が増えて目標を達成できない分は、CDMプロジェクトによって発行されるCERで補うとか、JIプロジェクトで発行されるERUを買うということになります。
 私は、このような仕組みは、だめじゃないかと思っています。
(参考) IPCCやアル・ゴアがノーベル賞を貰ったからCO2対策に目が行っていますが、ゴアが原子力エネルギーの利権とつながっているのではないかという疑惑もあります。

 これに対して、ロンドン経済大学とオックスフォード大学が作成したThe Hartwell Paperは、気候問題は単なる環境問題ではなく、人口問題であり、テクノロジー問題であり、資源利用問題であり、エネルギー問題であり、経済開発問題であり、土地利用問題であり、これらの劇的な再構築が必要だと言っています。
 日本でも色々な識者が指摘していますが、京都メカニズムの問題は、今でも13億の人がエネルギーに恵まれない生活をしているのに、その人たちのエネルギーアクセスをそのまま放っておく仕組みだということです。そういう人たちがエネルギーにアクセスできるようにしなければならない。そうするとこの仕組みでは答えが出ないことになります。
 この後お話し戴く郡嶌孝先生がよく書かれる式で、I=P×A×Tというものがあります。地球への負荷(Impact)は、人口(Population)と豊かさ(Affluence)とテクノロジー(Technology)によって決まるという意味です。そこでリサイクル技術を開発したり、先ほど仁蓮孝昭先生がおっしゃっていたhappinessという概念を入れると負荷が小さくなります。

 この式と同様に私が引用する茅モデルがあります。その式は、

 私は、この式を居ずまいを正す不思議方程式と名づけ、いろいろな取り組みの基礎としています。
 こうした式の中で、人口が一番問題だと思います。もっと深い答えを求めていくのがこれからの時代ではないでしょうか。そういう意味で、我々の周りには壊すべきバベルの塔が満ち溢れていると思います。
 これにどう立ち向かいどう壊し、どういう秩序というかどういうモデルを創造していく必要があるでしょうか。それらについて次に述べたいと思います。

理事長  井上 健雄

NPO法人イー・ビーイング
Copyright(C) 2003-2016 NPO E-BEING. All Rights Reserved