リーダーに必要なもの【11月】
今の世は、グローバル化、少子高齢化、IoT、AI等々、社会や企業の成り立ちの要因が根本的に変わってきています。嘗て企業や団体にアドバンテージを与えていたものが、逆に企業を倒産の淵にさえ陥らせるリスクになっています。その一番は人なんです。例えば、自分は経験もありスキルがあると思っているとそれは時代に合わないお荷物になっていることもあります。こうした状況に対処するのがリーダーの役目であります。しかも時々に下すリーダーの意思決定は、業績にどういう影響を及ぼすかが分からない中で判断をせねばなりません。
優れたリーダーは、正しいタイミングで、正しい意思決定ができる人です。
こうした状況下における、リーダーの指針として、再注目を集めているのが「貞観政要」です。
太宗、嘗て侍臣に謂ひて曰く、夫れ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正す可し。
古を以て鏡と為せば、以て興替を知る可し。 人を以て鏡と為せば、以て得失を明かにす可し。 朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過ちを防ぐ (巻第二任賢第三 第三章) |
太宗が述べたリーダーの三鏡をもう少し現代風に紹介しましょう。
ーの「銅の鏡」です。
自分の衣服、髪、顔の等を物理的にチェックして、乱れているものを直すということ。
単に乱れていることは、すぐ分かる訳ですが、そのオケージョンにおけるドレスコードはどうだとか...○○コードを満たしていても、今度は、センス等について、ちょっと鏡を見れば、治まるものでもありません。センスの悪い子が30万円持ってセレクトショップに入って出てきたら...それは心配です。
第二の「歴史の鏡」となればもっと難しい。
過去に照らして、未来に対応するものであるから。興亡を学び未来に備える鏡とすることは至難である。
オットー・フォン・ビスマルクは、『愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ』と言っている。
愚者とは能力が低い人ではありません。正しい判断ができない人が、愚か者な人で、経験から学びとる人も、賢者です。しかし、歴史から学んでいても正しい判断に至らなければ、愚者になるということです。歴史から学ぶということは、欠敗の確率を減らすことであり、成功を約束するものではありません。
三つ目の鏡。これが「諫議大夫」です。
耳の痛いことを進言する人を持ちなさいということです。あなたが会社のトップだとすると、あなたを諌める人は、社外取締役がであったり監査役と言ったところです。もしくは会社を余り知らない若手社員も候補かも知れません。
しかし、人は弱いものでおべっかばかりを側近で固めてしまうものです。自分に優しいこと言ってくれる人ばかりで固めると、自分を含めグループが組織の負債となってしまいます。5人の側近がいるなら、2人は反対勢力であるか自分を嫌っている人を登用すべきなんです。
大胆にまとめると、自分の器には限界がある。自分の利己心を追い出して、すなおに銅鏡、歴史の鏡、諫議大夫の意見、を自分の器に入れこむことです。こうしたセンスと勇気を持つ人こそが、リーダーと言えます。
理事長 井上健雄