2007年2月の言葉


 正直は最良の政策 

     ※フィランスロピー研究所の「洞察」は、
       この姉妹論です。
 最近、経験を智慧にまで高めた古人の寸言に自戒させられる日々である。
 私事で言えば、起業してから一番腑に落ちたというか、これしかないと思うのは、「正直は、最良の政策なり」というものだ。
 生き方、人とのコミュニケーション、仕事の遂行や中味…どれも正直に愚直にやること以外、道はないように思う。正直以外のあの手、この手など、一時的には通用しても絶対に持続的ではないからである。

 しかるに残念ながら、大人は(?)「正直者は馬鹿を見る」を教養(?)としているようだ。
 もう少しオブラートで包んだ表現をすると、不都合なことは真実と認めないという姿勢ではないだろうか。
 この例は、コップ3京都議定書から離脱したアメリカなんかが使った手※1である。

 そのアメリカも、環境から来る手酷い竹箆返(しっぺがえ)しと思われるハリケーン・カトリーナによるニューオーリンズの壊滅的被害から、徐々に変わりつつあるようだ。
 これはアル・ゴア元副大統領の手による『An inconvenient truth ― 不都合な真実』という本と映画の影響も大きいと思う。
 こうしたこともあり、世界の人々に環境問題の重要性が、本格的に理解されだしたと言える。

 そうすると、産業界でもぐっと加速がかかるかというと、そうとはならない。
 なぜならトヨタのプリウスのような、第2のプリウスのようなものがGMやフォードや日産で出たと聞かないからである。
 あのプリウスだって、販売予測規模から考えると収益と環境は相反しただろう。あのトヨタさえ、トップの判断なしには日の目を見なかっただろう。

 ここに「経営(者)は健全な赤字部門をもたなければならない」というドラッカーの金言が生きてくる。
 マーケットで儲かっている既存の商品が売れている間に、次の本格的商品※2を準備するということである。

 だから一人ひとりの心懸けは、未来に向かって正直にやるということである。その為に今日を疎(おろそ)かにしないことである。

 少し不二家に触れる。
 創業者藤井林右衛門の6代目社長藤井林太郎が一族支配の終焉を招いたのも、正直にやらなかったことが原因である。
 経営はもとより商品作りにおいても、品質や環境マネジメントシステムのISO9001、ISO14001の取得をしていても、何らそのシステムの運用や監査、そして経営者レビューがなされていなかったのである。本当にこれで経営かと思ってしまう。(こんな状態の会社に認証を出した審査機関も、その責を問われるべきであるようにも思う)

 資本関係では森永製菓の支援が第一義に思われた。しかしISOや食品衛生管理システムにアドバンテージをもつ山崎製パンに支援を受ける可能性が出てきている。
 まぁどちらになるか、それ以外もあるから分からないが、正直者吸収が起こりそうである。

 ちょっと古くさく、スマートじゃない論理展開となったが、

   Honest is the best policy!

であることを痛感したわけです。

※1温暖化は来ていないと強弁し、また来たとしても温暖化すれば今まで耕作できなかった所まで収穫があがるとか…
※2社会・地球が直面する問題にソリューションを提供するもの
2007年 2月1日
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄