2006年1月の言葉
 健全な常識で挑む2006 
    あなたの内なるものを引き出せば
    あなたが引き出すものがあなたを救う。
    もしあなたの内にあるものを引き出さなければ
    引き出してやらなかったものがあなたを滅ぼす。
  ……グノーシス派福音書

 これを私はこう読む。

 私が俳優になりたければ、成功する俳優になれるだろうし、クラシック音楽の作曲家になりたければ、素晴しい作曲家になれることを意味していると考える。

 何も俳優や作曲家になるのは特殊なことではない。誰もがその望むものになれると思う。

 しかし自分の才能や力の方向を誤ってはならない。

 古代の哲人も言っている。「偉大とは方向を与えること」だと。

 最近のニート族の増加など、自分の進む方向が掴めなくて、右往左往のモラトリアムに陥っている結果である。

 またその方向性も、金に毒されてしまうと姉歯氏などによる社会不正を生み出し、社会そのものを台なしにしてしまっている。

 方向を失うことは、意味や知覚や価値観を喪失することである。その結果、ニート族や犯罪の増加を招く要因となっている。

 こうした状況は、家庭や職場がかつてのように濃密な意味や価値観を持つ場ではなくなっていることにも原因がある。

 私はいま、家庭や職場がもっと高らかに意味や志を打ちだすべきだと考える。勿論それを言うか言わないかではなく、父・母親の背中や社長の背中が意味を語っていれば十分であるのだが……

 そこで私たちのミッションについて語るなら、アボリジニの教えが最適かもしれない。

 「あなたが世界に望む変化そのものに、あなた自身がならなければならない」というものである。

 私たちが世界に望む変化とは、市民が主体となって、自発的提案を土台にマーケットや常識、地元の技術力を活用し、地域をベースに地域を改善していくことである。私たちは、あるシステムの構成要素だけ取りあげて最適化するのでなく、システム全体の最適化を図ろうとするものである。この意味において、グローバル化も必然となる。

 私たちは、人間の生活と生存に不可欠な自然保護との両立を考えるものである。このスペックを産学官民連携と呼ぶ。

 この実行の根底に必要なものは新たな理論ではなく、「健全な常識」だと考えている。

 初春なので私の最も好きな二句を紹介して2006年の美しい出発の言葉としたい。

福寿草家族のごとくかたまれり  福田蓼汀
初暦知らぬ月日の美しく      古屋信子
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄