2006年4月の言葉
 過去の総和から未来へ 
 最近、過去に向き合わず先だけを見てIT長者とか金満家を目指す族(やから)が多い。若者に限らずいいおじさんまで含めて。
 それらの筆頭は堀江貴文氏である。しかし彼らはITバブル崩壊やコンプライアンス違反などで厳しい現実に直面している。

 これは日本人の一つの欠陥体質であろうか。慣用句でも『過去は水に流して・・・』など過去認知障害が多い。こんなこと−過去を水に流す−でいい未来が築ける筈はない。

 日本の首相は靖国を自分の見方・考え方だけで諸外国に理解して貰おうとしているが、それは間違いである。もっと歴史的な、国際的なスタンスで靖国を考えなければならない。そうすればもう少し行動も変わるだろう。

 わが首相は歴史を考えるトリックスターである。
 ドイツと日本の第二次大戦後の対応を観てみる。

 もう35年以上前に、ワルシャワ・ゲットーの慰霊碑訪問をしたビリー・ブラントの言葉が象徴的である。

 「自分の国の過去について批判的にとらえればとらえるほど、周りの国々との友好関係を深めることができる。若い人々にナチスの犯罪について責任を負わせてはならない。しかし若い人たちも歴史から抜け出すことができないのだから、ドイツの暗い部分も学ばなくてはならない」

 また教育面の取り組みも『過去への旅』という教科書においてナチス台頭から敗戦まで72頁を割くなど、実にしっかりしている。
 その上、1958年から2005年まで、延べ1万人のドイツの若者をボランティアとしてイスラエルなど13カ国に派遣した。この「償いの証」というボランティア団体は、今なお毎年定員の3倍〜4倍もの応募がある。
 このように過去としっかり向き合い今を見つめ、明日に向かう姿勢を評価したい。

 こうしてドイツを述べ日本に触れると、ナチスの罪は戦争犯罪ではなく人道に対する罪と規定されており、日本の場合、南京事件でさえ戦争犯罪に分類されないという識者も多いだろう。
 しかし日本は中国、韓国、朝鮮人民共和国等に対し、過去に対する贖罪行動をきっちりといろんな形ですべきである。その上で未来への歩みを若者を巻き込み出発すべきである。近隣諸国との友好と平和に向けて。

 そんな一歩も、私たちは過去を考え現在を把握した上で未来へ向けて行動しなければならない。それが歴史を厚く考えることである。
 そこで私が皆さんにお奨めしたいことは、「過去の総和から未来を創れ」である。
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄