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天高く馬肥ゆる秋、灯火親しむ候、物言えば唇寒し秋の風・・・
いろんな秋がありますが、私は最初の食欲の秋が好きです。皆様はいかがでしょう?
そこで今月は、食に切り込んで｢食の考え方｣保存版になる位のイメージで挑戦してみます。
この為には、食材やメニューや料理、味つけよりも（材料の下ごしらえ、戻し汁、だしの取り方、味つけ、温度使い等々から盛りつけに至るまでは、別の機会に本質をお知らせする予定です）、もっと本質的な風土とか人間とかを語る方が大事なんです。
この三つの大事をご紹介します。
まず一つは、日本の風土を考え摂食することです。例えば日本とヨーロッパの土壌を考えてみます。日本は火山国なので土は酸性となるのに対し、ヨーロッパはアルプスの山の上だって貝の化石が見られるように、海底がせり上がりできた島であり、土には海中のカルシウムが多量に含まれています。
そうすると、同じ野菜でもカルシウムの含有量が明らかに異なってきます。だから日本なら、カルシウム不足を陸のものではなく海のもので補なうというのが、食の原点になります。それが魚介類であり、海草なのです。
アルカリ土壌のヨーロッパでは、牛などの家畜の肉、酸性のものを多く摂っても中和されますが、日本の酸性土壌で酸性の肉を食すると、血液を酸性化させ、高血圧や脳溢血などを起こすことになります。
二つは、人間の体、歯から考えることです（同様に腸や鼻で考える方法もあります）。私たちの歯は、前歯（８）、犬歯（４）、小臼歯・大臼歯（１６）となっています。歯の構成比に従って、穀物を６０％くらい摂れということであり、肉類は１０〜１５％位摂れば良いということでしょう。本当はもっと少ない方がいいのです。ライオンの歯はみなトガっているし、牛などは草を食む前歯が発達しているように・・・（現代の環境問題にしても、牛肉１ｋｇの為に穀物７ｋｇを必要とし、その穀物の為に水７ｔｏｎを必要とするという数字もあり、穀物の摂食が重要となっています）
三つ目は、生物は自分の力でとれるものを食べるという原則です。若くて走り、投げることのできる時には、動物の肉を多く摂っても良いのです。林住期なら野菜、魚を主にする、これが自然の理（ことわり）だというものです。これは活動量（頭脳も含め）に応じて食べるという基本です。
これで食の考えるべき基礎情報（風土、人間、活動）を俯瞰（ふかん）しました。そこで、こうした前提の上で食材を一つ紹介することで、食の実践をお目にかけましょう。
秋の味覚、秋刀魚を材料にします。
日本と西欧人の体格の差を魚と肉だと思っている人が多いようですが、それは錯覚です。タンパク質、脂肪、炭水化物など殆ど一緒です。
違いは、ミネラル（カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、銅・・・）です。魚のほうがず〜っと多いのです。あっ！それと脂肪も異なります。魚は不飽和脂肪酸であるのに対し、肉は飽和脂肪酸です。これが決定的なんですよね。青魚に多く含まれるＤＨＡ（ドコサヘキサエン酸）やＥＰＡ（エイコサペンタエン酸）も不飽和脂肪酸です。これは血液をサラサラにするといわれるものです。
そして海面近くを泳いでいるため運動量が多いので、血合肉（ヘモグロビンやミオグロビンが含まれている）も豊富です。ビタミンＢ１、Ａ、Ｄ、Ｅ、Ｂ２、ＥＰＡなどは、肝臓の働きを強め、動脈硬化防止に効果があります。
あと忘れてならないのは、骨と内臓も食べてください。サンマは海面近くを回遊する魚なので、水圧対策もいらず、骨がやわらかいのです。とはいえ身を食べたあと、もう一度焼いてください。香ばしくておいしいこと間違いなしです。この香りの効能もいつか紹介します。内臓も食べてください。あの苦味が咽喉を刺激し、消化液が出るのです。
どうです。肉よりはサンマです。
このサンマをメインに「健康食一式」にするなら、煮干しの味噌汁に干シイタケを入れてください。野菜は青物野菜（葉トウガラシ、コマツ菜、ダイコンの葉・・・）中心のおひたしで摂ります。青い野菜は赤い血を創るのです。これは、葉緑素とヘモグロビンの分子式を見れば分ります。両方ともピロール核を四つ持っています。その真中にマグネシウムを持つものが葉緑素で、鉄分子を持つものがヘモグロビンなんです。マグネシウムが鉄に変われば血になるからです。そして、勿論ご飯です。食べ過ぎに注意して、サンマには大根おろしをつけましょう。
平凡な結論かもしれませんが、日本食こそ健康と元気の秘訣なのです。こうして満腹になれば、窓を開けて新鮮な空気を金木犀の香りとともに吸い込み、焼酎を飲みましょう。ああ生きてるなぁと思います。そして、中原中也や若山牧水の詩歌を口ずさみます。
これが私の生きる流儀なんです。 |
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