2005年9月の言葉
 土壌第三者評価委員会(2) 
 新しい土地の安全・安心評価の知識プラットホーム創りに入り、約200日。

 やっと大きなフレームワーク、土壌第三者評価システムが完成しました。今日までに識者、実務者、研究者を交え、ある時には大手監査法人のコンサルの方にも参加戴き、土壌汚染・浄化に関する知識・智慧やノウハウについて侃侃諤諤の議論を重ね、60数本の規約・基準・手順という形に制定しました。まだまだP→D→C→Aのサイクルを回してスパイラルアップを企ってゆかねばなりませんが、世に問うべき土壌の第三者評価システムの基礎は、出来あがりました。これを世の中の知的財産となるように、産学官民のコラボレーションのもとに、しっかりとした運用をしていきたいと考えています。

 このシステムを完成させるために、四つの知識変換に取り組みました。このプロセスを簡単にご紹介しておきます。

 一つは、共同化(Socialization)です。これは委員会を形成する人々の持つ暗黙知を、議論の過程で互いに共有し、新たな暗黙知に創造していったことです。この暗黙知の共有化が、次に続く過程の共鳴化現象をもたらしてくれました。有り体(てい)に言えば、一人一人が自己超越を経験し、一層高い所に到達できました。より深いプロの技に磨きをかけたと言えます。

 二つ目は、表出化(Externalization)です。これは、最初の過程で創造した暗黙知・ノウハウを、形式知に変換することでした。それは、第三者評価報告書や調査・浄化施工のチェックシートなどの形に結実しました。つまり、今までの既存の知識を越えて、新しいより有効な智慧を形成し、評価のベストプラクティスづくりへと進みました。経営者のリスク回避のためにも、こうした帳票による評価を受けて戴きたいと考えます。

 三つ目は、形式知と形式知を組み合わせる連結化(Combination)に取り組みました。文書、会議、電子メール、電話での会話などのコミュニケーション手段により、コンセプトや情報のヒエラルキーを構造化したことにより、ナレッジが個人を越えて委員会全体にまで広がる結果となりました。その一つの例がコミュニケーションボードになりました。このことにより、正確で遺漏のない、早い評価や高いサジェッションが可能です。

 最後は、内面化(Internalization)です。これは、形式知をさらに個人のノウハウや個人のメンタルモデルを越えて、新暗黙知へと昇華させるプロセスを組み込んだことです。つまり、評価行為の一つひとつから、それぞれが新しい暗黙知を獲得する行為です。これがまた最初の共同化に繋がるものとなり、スパイラルアップさせていくことが可能となります。

 これら四つの変換は、土壌第三者評価委員会という場で生まれ、育っていくことになると思います。これは評価を依頼される会社ともどもに、成長をしていきたいと考えています。

 このSECIモデルを活用した土壌第三者評価のプラットホーム化により、日本の土地流通が促進され、私たち市民の健康も維持され、結果として良好な地球環境を守るものになることを祈念しております。

(注)この考え方は、一橋大学野中郁次郎教授のSECIモデルを私たちの知識創造モデルとして活用させて戴きました。深く感謝し、その学恩の翼とともに高みに飛翔したいと思っています。

NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄