2005年3月の言葉

 視 点 (アングル) 

 いつだって「パラダイムの転換が必要だ」と叫ばれている。しかし、誰も本気にしない。だって、誰もそれに対して習慣や行動を変えていない。
 二十世紀と二十一世紀のパラダイムは、機械論から生命論へパラダイムは移り、人間中心から生命体全体への視野と変わり、経済合理性だけでは地球がもたないと騒ぎたて、循環・共生だと言っている。
こうした新パラダイムは、納得もできるしそのような行動をするべきであると思う。
 しかし、市民も企業も政府も何も変わろうとしていないように見える。
 そこで、このパラダイムチェンジを堀江貴文氏の行動から、その意義を探ってみたい。
(堀江氏については、フィランスロピー研究所のHPの『今月のありがとう』の2月号で“ドレスコード”でも報告している。)
 彼は、経済合理性を追求して、やや不適切な取得ではあったが、ニッポン放送の株を買い占めた。
 一方は、情緒的に申し入れや断りがなかったとか、従業員組合の結成やライブドアへの反発、反対を表明している。勿論フジテレビ側にも、経済合理性対策として、新株予約権の発行、ポニーキャニオン株売却などの焦土戦術に大童(おおわらわ)だが…。
 ややリーガルリスクマネジメントやインベスター対策が不十分だったと言えるでしょう。

朝焼小焼だ
大漁だ
大(おお)羽(ば)鰮(いわし)の
大漁だ。

濱は祭りの
やうだけど
海のなかでは
何萬の
鰮のとむらひ
するだらう。

 金子みすずの『大漁』は人といわしのアングルの違いを教えてくれる。
新時代のIT経営者堀江氏は、トリックスター(註)として二十一世紀型経済合理性新パラダイムを社会に投げかけたのである。
 世界とか日本と広い視点からいえば、どちらが勝つかは大して問題ではないが、このことが株の本来的な配当へと視点が移るなら、それは結構なことである。
株の値上がりによる売り抜けに重点があったものが、高配当と長期安定株主という構図になることは、歓迎される。
 昨年末、マイクロソフトは1株当たり3$の特別配当をした。
総額日本円で3兆数千億円が株主の手に入ったのである。こんな会社の株を手離す人は、いないであろう。企業は、経済合理性を追求し、きちっとした配当を出す。リーガルリスクマネジメントやIR対策をとる。その上で、きちっと循環・共生に手を打つべきである。
 このパラダイムを無視して、企業の防衛もない時代に入っている。
 今さらパラダイムなど?と嘯(うそぶ)かず、正面から対峙してほしい。そこに、企業の安定と豊かな未来がある。
(註) トリックスター:
本来ピエロという意味だが、ここでは時代の先端性とか、慣習に囚われた人々が考えもしないことを、何気なくやって時代の考え方に一石を投じ、本質に立ち帰らせる役目を果たす人として使っている。  
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄