2004年11月の言葉
 風 
 「今月の言葉」が、「月末の言葉ですか」と揶揄されたり、「おやすみが多いですね」と意地悪(?)を言われたりしています。恐縮し反省し、いつも刻苦勉励せよと自分に言い聞かせているんですが…
さて冬ですね。スキー場もそろそろ活気づいきています。
 ジャンプ競技から語り起してみましょう。
 私は、眺望の良い所が好きで、ラージヒルの上からの映像など大好きで、あぁ鳥になりたいなと思ったりします。
 とは言え、あの上には恐怖心に打ち勝つ勇気と大胆さと緻密な計算が介在する人間力の現場でもありましょう。
 ラージヒルなら90K/h前後の猛スピードで、アプローチのシュプールからテーク・オフする超人の世界です。
 ならば、超人が必ず優勝するかというと、そうではない所が面白い。風ですよね…
 遠く飛ぶために向かい風が良いのも逆説的でいいですね。白馬のジャンプ場だと五竜おろし颪が勝敗を左右します。追い風、向かい風、横風…と風との折り合いをどのようにつけるかが、ポイントです。
 このあたりになると、私たちの仕事と同じで風(世の中の動き・本質)の読みが成否を分けることになります。
 私たちには15秒ルールなどはありません。
 1秒かもしれないし、1年や5年のオーダーだってある。技術と体力等いろいろありますが、どちらかというと忍耐とか克己心のような心の体力を必要とします。
 活きた現実の世界では、無数の変数があり、それが顕在化したり、潜在化してしまったり徒花に力を入れた込んだりとその選択には、高度な洞察力を必要とします。
 現在、風として吹いているバイオマス発電について考えてみます。
 イケイケドンドンの時代は、大量のゴミを前提に、環境と経済の調和だと言ってゴミ発電のRDFサーマル・リサイクルが流行りました。
 しかし、安全だと言われていたものが、三重以外に大牟田、福山、石川で事故が発生しています。多発といって良いでしょう。
 その上、大牟田赤字、石川・長崎でも採算が取れない状況です。
 単純なアイデアでの処理を前提の投資では、余程の技術革新やオペレーション革新がない限り、割が合う筈がありません。
 深い社会システムとしての智慧を絞るべきなのに、量の増加や現状追認で考えてソリューションを間違えてしまったのです。
 生ゴミの堆肥化でも、同工異曲です。
 特に、コンビニ、スーパーで賞味期限切れの弁当などを堆肥にすると循環システムを謳っていますが、人間が食べた後の糞尿を堆肥として農地に戻すのを考えれば分かろうというものです。人間のお役にも立たず堆肥へのリサイクルには残念なものがあります。
風としての、原発の場合はもっと複雑です。
 確かに原発事故は恐ろしいものですが、石油資源のない日本でどうエネルギー調達するのでしょうか。また、CO2温暖化ガス問題にどう応えるか、その上石油備蓄基地での事故まで考えると、本当にどちらに軍配があがるのでしょうか?
 これは、単なる風としての政治や印象で決めてはならないと思います。
 どのようないい取り組みにしても、環境と経済と社会の総合的なウィン・ウィンは一筋縄では成立しません。
 風(本格的なソリューション)を読むことに長けた知見を活用してください。その中に私どもの環境知見も活用ください。
 私どものエコロジー研究会も皆様の見識を広げ深めるお手伝いが出来るかと思います。 
 風向きを旨く捉えスーパージャンプをご一緒したいものです。
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄