2004年10月の言葉
 ウィーク・タイズ(weak ties) 
 今年は、いと暑うございました。少し秋風が吹き始めましたので、この季節を白居易の二編で歓迎し始めたいと思います。

「ただ喜ぶ暑の三伏(さんぷく)に随って去(い)んぬることを知らず 秋の二毛を送り来たれることを」

(訳) 人は、三伏の時が過ぎるにつれて、夏の炎熱が去っていくのを喜んでばかりいる。しかし秋の訪れと共に、黒い頭髪に白いものが混じるようになるのに気づかないものだ。

 涼しくなるのは嬉しいのですが、二毛が混じる時として慨嘆するのではなく、実りと清涼感を楽しむ詩を用意しました。

槐(えんじゅ)花雨潤ふ新秋の地、桐葉風凉し夜なんなむ天

 皆様は、この二つの詩をこのホームページのような電子媒体でお読みかと思います。しかし、これらの詩を藤原行成の手で薄紙に流麗に記された本物を鑑賞できた幸運な男もいます。

 藤原公任が娘の婿で、公任より結婚の引き出物として貰ったのです。それが和漢朗詠集なんですよ。あぁ、羨ましい。

 しかし、彼の名が歌人などとして後世に伝わらないのは、「猫に小判」だったのでしょうか。

 ちょっぴり溜飲を下げたのですが、よく考えれば、私たちも万巻の書、寿限無の電子情報に囲まれて、何を成したかを考えると「ネズミに小判」であるやにとも思います。反省。

 役立たずと言えば、「ニート(Neet : Not in Employment, Education or Training)」を紹介しておきます。もうご存知でしょうか。基本的には、15歳以上〜25歳未満で、学生でもなく浪人でもなく働く願望のない人を指すそうです。少なく見積もっても40万人と言われています。

 もっと、恐ろしいのは、25歳から35歳までの男性でニートが35万人と推定されていることです。こうしたニートには二つのタイプがあり、特定の人々としか関係を築けないか、全く築けない人を「ストロング・タイズ」と表現するそうです。このタイプは、社会参画を中々果たせないで、社会問題になってきています。

 一方、「ウィーク・タイズ」というタイプは、タイトな関係に溺れずに、人々と幅広く穏やかな関係を結ぶことができる能力を持っており、ニート脱出が可能と言われています。

 そこで読者の方々には、こんな関心(ウィーク・タイズ)を望みたいのです。

秋深き 隣は何をする人ぞ (芭蕉)

 軽い関心を持って(片手にワインでも提げて)ニート族と接してあげて下さい。それが彼・彼女ならず、日本のハッピーともなるのですから…

 実は、私もニートなんです(ニート笑う)。お誘いをお待ちしています。
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄