コロナウィルスとの戦い(Ⅱ) ~局地戦から地球環境そしてアニマルウェルフェアについて~【4月】
2020/5/4(月)
前回の挨拶で「ウィルスとの戦い」において、人類とウィルスの生命史の長さからの強さ・優位性について、また、AI情報の取り入れ方について考察した。
この回では、もう少し具体的な事実からコロナウィルスに迫ってみたい。
近年“なぜインフルエンザウィルスがこれほどまでに猛威を振るい始めたのか”
人類は、他の生命体よりほんの短期間で人口を爆発的に増加させ、ここたった100年位で地球の生態系や気候に大きな影響をもたらしている。
恐竜時代を白亜紀といったように、現在はアントロポセン「人新世(じんしんせい)」と呼ばれるらしい。
これは、ノーベル化学賞受賞のドイツ人化学者パウル・クレッツェン氏の考案である。
人新世は、人類にとってあまり名誉ある行動の結果ではなく、資本主義や自由主義や利己主義を謳歌した結果であるように思える。
人新世とは、不穏な未来を予感させる。
ほんの一例でも、世界の湿地の50%が失われた。カリフォルニア州では90%、日本でも50%が消失している。
田畑は休耕期をなくし通年耕作化し、カモなどの水禽類の越冬地は狭く過密になっている。
なのに、人は増える一方で都市の人口密度は高まるばかり。
そして、食糧培養の圧力が高まり、動・植物に多大な迷惑をかけ続けているのが現状である。
例えば、ブラジル東南部のマンディケイラ農場では800万羽の鶏を飼育し、毎日540万個の卵を生産。
自然光や外気がほとんど入らない閉鎖式鶏舎で身動きできないほどに多数の鶏をケージに入れている。
餌は、遺伝子組み換えトウモロコシを与えられ、無理やり太らされている。
40~60日間飼われると、ベルトコンベアーで自動的に食肉処理されている。
かつては80日間は飼われていたものが、成長促進剤の投与で20日間も命を縮められている。
豚にしても、世界で8億頭ほどがこうした仕打ちにあっている。
つまり、嘗て庭先で飼われていた「庭鶏」が「工場トリ」に変わっている。
豚さんも牛さんも、みな同じような扱いになっている。
鳥インフルエンザや豚コレラは鶏さん、豚さんたちの今の境遇から逃げ出す手段じゃないかとまで思ってしまう。
私は、動物さんたちの権利、活き活き生きる権利をもっと増やしていくことが必要だと思う。
これがアニマルライト(動物の権利)、アニマルウェルフェア(動物の福祉)と呼ばれるものである。
やはり、地球は、生物の多様性を欲している。
今回、人間がオオコウモリまで食べたことが、新型コロナウィルス感染の広がりにつながったのではないかと言われている。
今のように、地球上において人間様だけが偉ぶって、温暖化を招き、アニマルライトを侵している。
この事態は、自然からの竹箆(しっぺ)返しと考えるべきでないだろうか。
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スペイン風邪と同じ |
こう考えると、人口の都市集中はいつでもパンデミックの危険を内包している。
大局から考えると、今回の新型コロナウィルス対策は「地球温暖化をいかに止め、人間が都市集中せず、生物多様性を尊重し、動・植物をいかに自然の中で育てていくか」ということが、遅いように見えるかもしれないがこの疾病の小康後、本格的に取り組むべき着実な対策と言えるだろう。
これらこそが、人新世の不穏な未来を回避する本道である。
理事長 井上健雄