サードプレイスを考える【11月】
2019/11/1(金)
ある就活中の学生が、産休育休制度や福利厚生制度を重要視して会社選びをしている。
30才までに結婚して子どもを産みたいなら、それでいいでしょう。しかし、いま恋人もいないし婚約者もいないとしたら、結婚しないかもしれないし、結婚しても子どもをつくらないこともあるだろう。とすれば、こうした制度の充実した会社より、バリバリ働けて所得が高い会社の方が、良いのかもしれません。自分も会社も社会もいろんな変数のぶつかり合いの中で様々な変化や進化をしています。こうした時、人は時々にどう考え、どう行動したらいいのでしょう。
その上、かつては「一生ものだった雇用契約」が、近年では「追って指示があるまで」という短期契約等の「束の間の契約」になってきている。
これは過剰流動性と言われる現象で、社会を不安定にし、様々な社会問題を起こし始めています。適度の流動性は人々に自由感を与えるが、この状態はそうではない。先の学生が、意思決定するには自分の望みと社会の変化の中で、どういう変数を組み合わせて方程式をつくりあげていくかの問題です。一筋縄ではいかないのが現代です。
就活の学生に較べ、無事に会社を務め終えた高齢者は幸せです。「つまり追って指示があるまで」が定年まで続いたからです。しかしこうした人も収入が、殆ど入らない時期がやってきます。定年です。
厄介なことに人生100年、あと30年生きるための必要な貯金や不動産など資産を持っていればOKですが、そうでないのなら、なかなか困難な状況に陥ることになるかもしれません。
こうした状況を『リキッド・モダニティ』の著者ジークムント・バウマンは、現代社会を定数項のない方程式のようだと言っています。例えばX×Y=Z という簡単な方程式でさえ、どれか二つの値を定めないと解は出ません。
にもかかわらず、この「X、Y、Zの全てが定まっていないのが現代社会」だと言っているのです。
現代は、若者であれ、高齢者であれ、こうした過剰流動性の中で生き抜いていかねばなりません。その為に家庭や職場というファーストプレイスやセカンドプレイスとは別にサードプレイスを築きあげることをお奨めします。
サードプレイスとは、一つの集団や生活基盤に頼らずにコミュニティにおいて自宅や職場とは別に、リスクを分散して生きて行ける第三の居場所のことです。このサードプレイスをつくるかそれらに参加することにより、過剰流動性に対処することになります。これからの過剰流動性時代における合理的な意思決定の一つになるのかなと思います。
そのサードプレイスへの参加条件は、自発的な協働ができる、自分のできることが貢献となる関係性を築く、そして何よりも相手、仲間をリスペクトできることで成立します。
今、社会を支えている多くの条件や社会の価値観が、大きく変化しています。こうした時、あまり「決め込まないで」で「いまを選んでいる」人にならなくてはなりません。
例えば、インフルエンサーやユーチューバーになるという「一人イノベーションの実践者」になるとか、いま、自分の興味あることを、学び続けそのパフォーマンスを伝えることで仕事を創出するとかです。
日暮れて道遠しかも知れませんが、遅くはありません。サードプレイスづくり今から始めてください。サードプレイスは、単なる場所や人々の繋がりだけではありません。自己陶治と協働の精神で物事に取り組む人に自然と形成されてくるものです。
まず隗より始めよ!
理事長 井上健雄