インバウンド観光のかんどころ【10月】
2019/10/1(火)
観光先進国のベルギーでは、インバウンド客の増加策(マーケティング)に金を使うより、きてくれた人にどう満足して帰って貰うかの、観光マネジメントに重点を置き始めている。
今、日本の社会を見渡してみると、殆どが販売促進に力を入れている「売上」中心主義である。
そのため車のアクセスを良くしたり、バカ派手な看板、安さや利便性ばかりを追求している。
結果、街の景色や良さが、どんどん崩れていっている。今、立ち止まってやるべきことは、その地の文化や歴史を守りそれをしっかり伝えていく、伝統食を味わって貰う、語り部が、生の情報を発信する等...が必要なんです。
つまり販促に力を入れる事と観光マネジメントは、同じようで同じではないんです。
例えば大学受験について考えよう。大学合格は、高校までに学んだことをしっかり記憶して簡単なことから答えていく時間マネジメントが大事なんです。
このルールに最適化した人が合格して大学生になるのです。しかし、これでは大学生を最初から未来社会の一人として負け戦さに参加させるようなものとなる。高校と大学では、明らかにルールが異なり、大学は、新しい企画を創ったり、他者と協働して、みなで新しいものを産みだしていくことが、求められている。大学は、先生に教えてもらう場ではなく、自立して自主的に学ぶものなんです。
習ったものを答えとして出して成功した時代から、習ってない答えのないものに挑戦していくこれからの時代は、学生にとって使う頭や武器が異なるんです。
旧来の学んだことに答えて成功した人に、異なるゲームをやれと言うんですから、これって凄い皮肉ですよね!上手くいきません。自分の頭で考えて答えを、想像し創造する時代になっています。
つまり適確な質問(or疑問)疑問を発する能力により、答えの輪郭を形成としてゆく時代なんです。インバウンド観光について学ぶのなら下の一~四までの大局を学び、その上で小局に着手することが、ポイントとなります。
一、国や地方自治体の観光政策を知った上で地域創生に取り組む
二、観光産業における主要事業分野の中身を知る(学際活動やインターネット等による)
三、観光経営論としてブランティング戦略やIT戦略を知る
四、企業管理論として人材管理やリーダーシップ、リスクマネジメントを学ぶ
こうした観光マネジメントの大局を押さえたうえで、小局に着手すべきなんです。
日本は、販売促進的なことばかりに力を入れて地方創生と言う名のもとに、今までなかった農産物を売り出したり、道の駅を大型化したりの的外ればかりをしています。
しかし本当に大事なことは、商品化されない部分をどれだけ持っているか、どれだけ発掘しているかがその地域の価値なんです。
「Anywhere」どこにでもあるものでなく、「Somewhere」として、そこにしかないものを見出し、保存し、伝えていく事に、観光マネジメントの本質があるのです。
例えば、京都なら祇園祭(八坂神社)、大阪なら天神祭(大阪天満宮)、東京なら神田祭(神田明神)などは、観光マネジメントとして一つの完成形となっています。
しかし、私たちが取り組むべきことは、ここまで大きなものでなくても、地域の人々を知っていて、楽しみとして参加する祭り、これをソーシャル・キャピタルとする努力が必要なんです。長野県飯田市において「いいだ人形劇フェスタ」という世界中の人形劇アーティストが参加する、また地域の高校生が人形劇を演じたりして裾野を広げています。だから40年の歴史ですが、ちゃんと育ってきています。もっと新しい例ですが、金沢卯辰山工芸工房というものもあります。加賀百万石の誇る伝統工芸の継承と発展、地域の文化振興を目的とした施設です。このように歴史を掘り起こしをして、その価値を新たなソーシャルキャピタルとして醸成していくことこそが、インバウンド観光の優先事項だと思います。
理事長 井上健雄