コモンズの勝利にむけて【12月】

2018/11/22(木)

 コモンズの悲劇とは、多数の人々が利用できる共有資源が乱獲されて、資源の枯渇を招いてしまうという経済原則である。
 これを英語で表現するならFirst-come-first-served principle(早い者勝ちの法則)。
 不等式ならこうなる。個人が享受できる利益>皆で平等に負担するコスト。
 裏切者が得をする、というものである。
 これは1698年、ギャレット・ハーディンという生物学者が発表したものである。
 世の中が世知辛くなると、コモンズの悲劇が増えてくるようです。

 一方で東日本大震災後、志津川湾の養殖施設のすべてが失われるという悲しい出来事が、コモンズを豊かにするという状況を生みだした。
 これは震災後、養殖いかだの数をコントロールし、良いカキづくりに取り組んだ結果である。
 このことにより、収穫まで2~3年を要していたものが、1年で収穫できるまでになっている。
 これは一種の「コモンズの勝利」として表現できるものだろう。
 この状況は、このカキ養殖を世界自然保護基金(WWF)が設立した「水産養殖管理協議会(ASC)」の国際認証を取得する方向の結果でもあろう。

 2009年、ノーベル経済学賞を女性として、初めて受賞したエリノア・オストロム(インディアナ大学教授)のガバニング・ザ・コモンズ(コモンズの統括効果)と呼ばれるものがある。
 共有資源を自主的に管理するルールを述べたもので、オストロム教授は、共有資源の自主管理の協力行動を、繰り返しゲーム理論を用いて説明し、ゲーム理論の新しい応用領域を開拓している。
 人間は、第三者の強制なしに、いかに共通利益創出の為の協力を実現するルールを、自らが、構築できるかを探究せねばならないのである。
 コモンズの勝利は、政治経済学と呼ばれる分野でもあり、神経経済学ともいわれる文系・理系の枠組みを超えた「知の再構築」という多様な学問分野の交流により実現できる成果である。

 今、生物多様性への関心も高まってきている。
 生物多様性を要約すると、地球資源と人々の生活との葛藤である。
 一人ひとりの人々が、食べて生きることと、公共財としての地球資源の一つである生物多様性をどう守るかという問題である。
 ○○ファッショ、××ファッショでは、解決できない。統合的な知が求められている。
 多様な視点をもった多様な人々が、公共財のガバナンスをどうするかということである。
 多様な人々の意見の総和において、コモンズの勝利にむかうものでなければならない。

 2019年は、公共のガバナンスが大きな課題となるだろう。
 私たちは、コモンズの勝利にむけて邁進しようではありませんか!

ASCは、オランダに本部を置き、乱獲や海洋汚染を防ぐ目的で2010年に設立されたもの。
ここでの認証を受けると、環境にやさしい水産物であることをアピールできる。

理事長 井上 健雄

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