自分の足で立つ【10月】
2017/9/27(水)
物事の結果をコントロールする情熱をもって生れてくる、それが人である。
ある地域の老人ホームで、大学による実験が行われた。
それは、観葉植物を配り、それに水やりや面倒を見るようにと告げられた(A)グループと、観葉植物は施設で面倒を見るから放っておいて結構ですよという(B)グループの二つである。
そして半年後
死亡した人の比率 | ||
Aグループ | 観葉植物の世話をするグループ | 15% |
Bグループ | 何もしないグループ | 30% |
もう一つの実験
(A)学生の訪問について曜日、時間等希望を聴かれたグループ
(B)学生が要望を聴かずに定期的訪問
Aグループ | 学生の訪問に要望を出したグループ | 薬の服用が少なく健康 |
Bグループ | 学生の計画で定期的な訪問 | 薬をたくさん服用し不健康 |
つまり、自分で状況をコントロールしている層が、死亡率も低く、健康的で薬も少なくしか飲まなかったのである。
ところが、自分で状況をコントロールしていた層に悲劇が起った。
この大学による実験が終った後、Aグループの死亡率がBグループよりも圧倒的に高くなったのである。
自分で状況をコントロールしていると思っていた層が、本当は表層しかコントロールしていないことに気づいて対処していれば、こうはならずにすんだであろう。
施設側も、もう少し深く考えればこんな不用意な実験を受け入れなかったかも知れない。
人は本当に自分の足で立ち、歩き、そして自分の頭で考えて行動しているかを、しっかり問うべきである。
自分の足で、自分の頭でという所を、デジタル化振興への取り組みから考えてみよう。
自分の得意分野に集中しているだけでは、Aグループの最後に最悪の結果が出たように、集中分野の上位概念をしっかりコントロールする能力を涵養しておかないと、競争には勝てない時代に入っている。
今、デジタルの世界は3層に分れ、それぞれが進化をしている。
①のICT層の上層の制空権は、もう日本勢は駄目であろう。
トッププレーヤーとして、3Aと呼ばれるアルファベット(グーグル)、アップル、アマゾンがいる。
③の地上戦は、ドイツ、日本の得意分野(トヨタの改善は抜群に秀れている)であるが、上空、特に、中空を押えられるともう勝てない時代に入っている。
そうすると、私たち日本の戦う分野は、②のICT-FAのインターフェース層を制することがポイントとなる。
今後、FA層は、②の分野からFAへのファイアウォールを築くべきなのである。
②のこの層は、ドイツのシーメンスが一歩先んじているし、フィンランドはデジタルヘルスケアの実験を既に開始している。
日本の強いFA層を活かす中空の制空権を手に入れることが、日本の成長のキーとなるのである。
FA層が自分の足で立つということは、②のICT-FAを押えることなのである。
こうしたグローバルな動きから、私たちの立ち位置を見直すことが、自分の足で立つということなのである。
理事長 井上 健雄