NPO法人イー・ビーイング
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文明の行儀作法(1)

落紅これ無情のものならず
春泥となりて更に花を護る  きょう自珍 (きょうは龍の下に共と書きます)

 文明の寿命は、何が決め手となったか?
 アプローチに二つの方法がある。

一、文明を衰退させたものは何か?
二、文明を維持させたものは何か?

 一について考えると、隕石、地震、火山の噴火、疫病、森林破壊…などがあろう。
 つまり、ありとあらゆる目録が必要となるだろう。

 しかし二の観点に立つと、意外と分かりやすい。
 文明を起こし支える為には、人々の生活を支える食糧なしには、文明の維持はない。
 社会と食糧の関係がポイントとなる。つまり文明という単位は定住を前提とし、その周辺における農耕が成立しなければならない。
 農耕の為には、食糧供給の母となる大地が必要である。大地が人々の生活をまかなう食糧を産み出してくれる限りにおいて、社会は成立するのである。
 従って、土地が支えられる以上の人が増えれば、土地収奪的農業や過放牧により土壌侵食、土壌の劣化を起こし、食糧不足となり、社会的・政治的な混乱から紛争が起こり、環境難民が増加し、文明が消えるのである。
 私たちの文明を成立させているものは、大地である。

 しかしこれまでのところ、土壌の維持を基礎とする文明を生み出した人間社会はほとんどないのである。
 70億人の人口を擁するこの地球の最大課題は、土壌保全である。
 この土壌保全なしに、文明の、いや人類の存続はない。

 しかるに私たちは、いま全世界で毎年240億tの表土をなくしているのである。
 アメリカを例にとれば、中西部の農地だけで数100万tの表土が浸食されていると、アメリカ農務省は発表しているのである。
 私たちが今、不毛の地としている現代のイラクは、かつては肥沃な土地で、文明を築き上げたのである。この文明のゆりかごであったイラクの地は、砂塵の舞う砂嵐の地となり、表土流失による食糧不足を招き、人々は環境難民として他の地に散っていったのである。

 私たちは、環境問題への取り組みをいろいろしているが、こうした土地のあり方を考えれば、上っ面を撫でてお茶を濁しているにすぎない。
 文明・文化の為の本当の行儀作法とは何か。
 ひもじい時に、ちょっと農業などに思いを馳せればよいというものではない。
 私たちの主食としているコムギ、コメ、トウモロコシ、オオムギの4種だけで、5億ヘクタール以上を栽培している。この単一種の植生が持続的なのだろうか。大きな問題を抱えている。
 冒頭の句のように、「赤い花が落ちて、泥となる」このような輪廻の循環を地球規模に組み立てる大きな意味でのランドスケープこそが、人類の行儀作法なのである。

(注)この文明の行儀作法については、たぶん10回以上にわたり記していくことになるので(1)としています。

理事長  井上 健雄

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