私たちの生き方を考える 【2月】
2024/2/20(火)
私たちは、いま生きているいろんな局面において、ティッピングポイントに対峙しています。
ちょっとした条件が異なると、砂漠にもなるし、線状降水帯が発生すると、河川の氾濫による洪水にもなる…
熱帯地域で発生する上昇気流は、水蒸気を多く含み大雨を降らせますが、中緯度地域(北緯・南緯とも30度付近)までくると、空気が乾いて乾燥地帯となることが多いのです。
そうすると日本も北緯35度あたりに位置しているから砂漠化してもおかしくありませんが、幸運なことに、日本はモンスーンによる季節風により湿潤な気候となっています。
今、偏西風の蛇行現象も大きくなっており、いろいろな変化に遭遇しはじめています。
ティッピングポイントとは、不可逆的な変化を起こす臨界点を指します。不可逆的な変化が起こってしまえば、もう元に戻れません。
ですから私たちは、いろんな変化に会いながらも、フィードバック・ループが働く適応システムの世界を、なんとしてでも維持しなくてはならないのです。
私たちは、今回のコロナパンデミックにより、はじめて「人類」を発見したと思います。
今までも人類という表現はありました。
『今、人類が初めて月面に下りたったのであります。』たった二人が月面に立ったのです。
それにひきかえ、コロナパンデミックスは、私たちみんなが経験しました。すべての人がコロナパンデミックという大河に入ったのです。
「人類として」
例えば、私たちが狭い地球で住む1万人の村人として、9,990人がコロナワクチンを打てていたとしても10人の未接種の人の中から1人の人がコロナ感染すると、その流行を抑えることは至難になります。
本当にこの疫病を防ぐとしたら、惑星レベルでのワクチン配布がされるべきです。
「人類のヘルス」を守るために。
前半に述べたのは、人類による地球資源の貪るような消費から、co₂濃度の上昇を招き気候変動が大きくなり、後戻りできないティッピングポイントまできているということです。
ここにきて、コロナパンデミックのような大疫病に対し「人類」としての対応が必要だということを悟りつつあります。
つまりこの「どんどん成長を目指す資本主義」の限界が見えてきているのです。
こうした事態に対し、一人ひとりの人が地球のヘルス(人も動物も植物もそれぞれ生命)を守る重大さを感じて、みなに知らせ、みなを巻き込み、行動を変えて欲しいのです。
私は、大きな社会システム等について語ることはできませんが、私たち一人ひとりが
「生命の網の中のプラネタリー・ヘルス」を追求すべきだと感じています。
この大きな命題への道筋の一歩として、働き方と賃金について考察してみたいと思います。
例としてタンザニアリサーチを紹介します。
タンザニアで「学校の校庭に植樹」するというプロジェクトがありました。
この植樹のために2グループ編成されました。
Aグループには、「最低賃金を支払う」と伝えられた、
Bグループには、「賃金は支払われません」とした。
さてここでクエッションです。
Q:植樹後のグループの満足度が高かったのは、A・Bどちらでしょう。
先を読まずにまず考えてください。
もし何人かのグループでいるのなら、グループ討議をしてください。
タンザニアでの満足度調査の結果は、圧倒的にBでした。
Aグループの人は、なかなか大変な仕事だった
労働時間も長かった
割の悪い仕事だ…
Bグループの人は、自分のコミュニティに良いことができた
いい運動になった
子どもたちに日陰を作れて嬉しい
充実感を語る人が多かった…
同じ「植樹」でありながらAとBでは対照的な結果となりました。
なぜでしょう?
Aは、お金(最低賃金として)を支払うというインセンティブがつくと、この労働は、市場関係に入ったことを意味します。つまり、市場関係に入ったからには、最適のリターンを求めることは当然かも知れません。
一方Bは、社会的な価値あることをしたという満足感を感じあう関係となり、社会や子どもたちへの贈り物をできたことを、喜べる機会となったのです。
私が後半で述べた「生命の網の中のプラネタリー・ヘルス」への道筋の一つとして、タンザニアの植樹ボランティアを紹介したかったのです。
このように環境を守る一助となり、結果として人の健康への貢献となる社会的価値を創る仕事に、賃金を離れたお布施や贈り物として、些少のお金で回る社会なんかが理想です。
市場を離れた社会的意義ある仕事をそれぞれの立場でお布施化できないものかと思っています。
特に環境を守る、次世代を育てる教育や幸福感を感じられる社会づくりへの一つの生き方として新しい生き方を導入できないか等、夢みています。
エエ年こいて夢なんか見るな!とお叱りはごもっともです。
しかしご一緒に新しい風を吹かせませんか!
理事長 井上健雄