2005年12月の言葉
 定義を創造する 
 ドイツのビスマルク首相は、プロイセン軍隊の引退の年金対策として定年を65才とした。この時ドイツの平均寿命は30代半ば。(世界の平均寿命も47才)つまり、年金給付をしなくてすむ意思決定をしている。

 アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領にしても、「貧困に苦しんでいる老人を守る」とした守る老人の年令を65才と定義した。これも社会保障費を抑える為のものであって、この時のアメリカの平均寿命は63才に満たず、老人の適用者を少なくする様に決定している。

 こうした状況を考えれば、いかに定年とかが政治的にまた財政的に負担がかからないように決定されてきたかが分る。

 いま日本でも、高齢者を勝手に分類し、医療給付や年金給付もお上に都合の良いようにしている。一方では団塊の世代の定年を控え、労働力不足や知識継承の遅れから、今までのリストラを忘れたように定年延長や再雇用制度とてんやわんやである。

 これら総じて、政府や企業の姿勢は、有り体に言えば国民や社員を守るべき立場の人たちは国民や社員中心に考えるのでなく、彼らの都合で規則やコンテクストを恣意的に変えているように見える。

 就業期間一つを考える場合も、私は単なる年令を指標とするのでなく、個々人の一人ひとりの能力(肉体的、精神的、知力…)から、個々人について決定されるべきである。その上で、それぞれの人生や仕事を再発見できる方向に誘導できる社会になるべきだと考える。

 私は今、NPOをしている。このNPOを単に行政でもない、プライベート・カンパニーでもないとするだけでなく、点線NPO論(新定義)を唱えている。これは何かというと、今私たちがもっているリソース(人、物、金、情報…)だけに限定せず、やろうとする意志とその方向性に集う者すべてをリソースする考えである。このような集団を目指して私たちは進んでいく。わがNPOは枠を超えて、それらの人々が主体として活動し易い連合組織の調整体となることである。

 調整とは、私たちがコントロールしている、していないに関係なく、よいパフォーマンスが出せるように仕事を運び、組み立てることである。具体例で言えば、アメリカの州の上に政府があるように、またヨーロッパの上にヨーロッパの国々をマネージするEU連合が出来たように、インターネット上に辞書創りをするウィキペディアであったり、ビジネスならスペインはバスク地方の150社以上の参加するモンドラゴン協同組織(MCC)がある。(注)この辺りの情報は1月の挨拶で深め展開する予定です。

 私たちも一人の人間として、無数の選択肢の中で自己発見と別の人間にもなるという冒険の社会生活を送れるイー・ビーイングで生きている。こうした意味において、私たち市民も一人ひとりの生き方から古い定義を超えて、新しい定義を世に問うべき時に来ていると思う。

 つまり私たちの仕事は、「未来の為のコラボレーション・アーキテクチャを創造すること」になる。
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄