2005年7月の言葉
 第三者評価委員会(1) …コンプライアンス・クライシスをおこさないために… 
 最近、コンプライアンス(法律遵守)違反、いわゆる不祥事がよくマスコミ報道される。えっあの大手とかあの名門企業が醜態を世に曝している。

 印象の強い大手企業のコンプライアンス・クライシスの対応を記してみよう。まず、大阪アメニティパーク(OAP)の土壌汚染隠ぺい問題は、三菱地所の高木茂社長、三菱マテリアルの西川章会長の引責辞任、小田急電鉄の有価証券報告書の虚偽記載では、利光國夫会長兼グループCEO等の引責辞任、少し古い事件であるが三井物産の北方領土ODA不正は、上島重二会長、清水慎二郎社長の引責辞任があった。そこで物産ではコンプライアンスを最優先課題に掲げて登場したのが槍田松螢社長である。しかるにディゼル車の排ガス除去装置のデータ捏造事件を起こしたうえ、2005.6.14逮捕者の出た直後の会見に社長が退社して出ないという事案を起こしている。

 これら企業は、伝統もあり、社会からの輿(よ)望も高く、優秀なトップ、選良のスタッフを抱えながら、地に塗(まみ)れている。この不祥事の傾向も時代とともに悪化しているようである。概して2000年以前はトップのモラルハザードであったものが、2000年以後はミドルとか現場のモラルハザードに移ってきている。このことは、これからまだまだコンプライアンス・クライシスが増えることを意味する。

 特に注意すべきことは、コンプライアンスを掲げ登場した新体制までが、法を守れない構造にあるということである。そうすると日本にもホイッスル・ブロワー法がいるとか、今度はコーポレート・ガバナンスだと言って、独立した社外取締役とか執行役員制度、監査役の独立性、ディスクロージャー不十分などと騒ぎ立てるが、社内完結主義だけでは公平性・客観性・信頼性に不安が残る。

 重要なことは、社内のことを社内の人間に点検させることや、トップの権限や独断のもとに選ばれた社外取締役・監査役に企業行動をチェックしたり監視を求めることには限界があるということである。今、企業社会はもとより、行政組織もそうであるが、専門化の進展とともに部分的思考にハマリ込み、全体視野を欠いてきている。このあたりが本源的な問題であろう。

 そこで客観的な第三者に企業行動を評価して貰う体制が必要であろう。これが私たちが考える企業行動第三者評価機関説である。

 例えば、先程述べたOAPの問題に対処する為には、クリヤーすべき対象法律(ex.土壌汚染対策法…)の十分なスクリーニングとチェックであり、また土壌調査や分析の結果についてその道の権威による第三者評価があれば、こうした蹉跌は防げた筈である。

 こうした現代社会が直面する社会的要請を受けて、これらの問題のソリューションの仕組みを産学官の協働のもとに土壌第三者評価委員会を創設した。この仕組みについて下図を参照されたい。委員会を形成する体制は、深い学識経験者や実務で数多くの経験を有する技術士やコンサルタントの方々で構成されており、一般社会からも高い信頼をいただけるだろう。また、高い見地から第三者評価委員会を評価する評議会の高品質の評議員体制や、専門コンサル機関とも協働し、第三者評価の適正さを評価してもらうという、二重三重の仕組みを用意し、その信頼性を高めている。

 今後こうした第三者評価を、それぞれ斯界の知見にご協力戴きながら一つひとつ世に問うていく予定である。これらのデータベースを整理し補強し検証し、現代のスタンダードとして世に提供することも視野に入れている。乞うご期待。

 土地の安全性の観点から、土壌調査・分析の信頼性の担保や情報開示による土地流動性を高めることを希望される向きは是非、特定非営利活動法人イー・ビーイングによる日本初の土壌第三者評価委員会のレビューを受けて戴きたい。この第1回レビューは、今年の9月から開始予定である。今、土壌研究会会員募集や第三者評価についての相談も受け付けている。下記にメイルか電話を戴きたい。尚、当該第三者評価機関のホームページは8月の下旬にアップする。土壌に関するいろいろな知識、最新情報を満載する予定である。そうした社会性からも、学識者や秀れた実務者の投稿を歓迎したい。
産官学連携のもとに
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄