2004年3月の言葉  毅魄(きはく)の風韻 〜 人財とは 〜 
 芽ぶかんとするしづけさの枝のさき(素逝)
 早春の季節がやってくると花や葉の芽が一斉にふくらみ、やがて瑞々(みずみず)しい花や葉を伸ばしてくる。
 春は、田畑を墾(は)る、木の芽の張るや空の晴るとか、とかく芽出たい言葉だ。
 この春、イー・ビーイングには春の嵐と呼ぶにふさわしい様々な動きが出てきて、新年度がスタートしようとしている。エコステージや青果ロジなど、私たちは、企業の方や一般の消費者の方々に「企業の環境マネジメントへの取組」「地球と人間の健康」を提供する責務と期待を背負って本格的に動き出したのである。
 私たちがこの責務と期待に応えることができるかどうかは明らかでない。しかし間違いなく明らかなことは、私たちが任せられた仕事に「うぶ」でいると必ず企業の健康と人の健康が悪くなるということだ。
 そのために私たちは聡明で、誠実で、そして有能な戦士を闘いの場に連れてくることが必要であろう。
 さてリーダー像について、タケノコを語ることで示唆してみよう。
 雨後のタケノコとは、4〜5月頃の成長をさすものであるが、最成長期にはマダケで1日121センチ、モウソウチクは1日で119センチと凄い伸びをする。この春の成長の秘密は、秋から冬にかけてしっかり養分を蓄えた地下茎にある。
 1本の親竹は、1平方メートルだけで10〜20メートルもの地下茎を張りめぐらしているにもかかわらず、すべてのタケノコを育てずに地上に出た竹の50〜70パーセントをトマリダケとし、30センチ以下の高さに留めて枯らしてしまう。つまり、3割強の竹を育てるという意志決定により、その驚異的な成長を支えている。また残したエネルギーは地下茎に蓄え、次代のタケノコの成長を支えるのである。この伸びる竹とトマリダケを間違えて選択すると竹林は衰えてしまう。
 この植物の現実を人間の世界にそのまま持ち込むことはできないが、学ぶべき教訓を2点だけあげるとすると、

一.

『地下茎《知恵(知識×経験)×時代認識×イマジネーション》のしっかりした人を登用する』ということ。
 人物の肝胆(かんたん)の良さは目容(もくよう)にあらわれるので、登用のコツはよい顔の男女を選択すべきであろう。

一.

 

『パイが限界的(または減少してゆく)な時、メリハリのある配分とリストラが必要だ』ということ。しかし、リストラが無用の枯枝や本質的に価値のないものを切り捨てるのであれば、それは仕方がないであろう。とは言え、実際は切り捨てられるのが枯枝ばかりということはめったになく、実は問題なのは剪定(せんてい)用ばさみを使っている手だということがままあるので注意が必要だ。
 新しい健康と福祉の問題を提起し続け、解決に向かって走りだそうとする私たちは、冒頭の句のように、芽をふこうとしている枝のように静かである。この静寂は、ハイ・スピリットな人たちの毅魄(きはく)の風韻を私たちは聞こうとしているのである。このプロジェクトに皆様の参加を促したい。私的な報告になりますが、我がグループに菅原桃子さんを迎えることになった。彼女は、今年京大の修士課程を了え参加してくれる。皆様の一層のご支援を賜りたい。
NPO法人 イー・ビーイング
理事長 井上健雄