世に乏しいものを贅沢に使い、私たちができている。
と書けば「それなんやねん?」となる。
「ハイ!それは元素番号6番、記号はC、炭素。」
地球の地表及び海洋の元素をすべて(分る範囲で)調べると、炭素は、重量比でわずか0.08%を占めるに過ぎない。
しかし人体を構成する元素の18%は炭素である。
これは人に限らず、全ての生物の基礎は、炭素よりなっている。
細菌から象さん…まで、生命を形づくっているもの、これが炭素である。
炭素は、プラスにもマイナスにも偏らない性質で、炭素同士をはじめ他の元素と結びつきやすくしていることにある。
現在人類は、7,000万以上もの化合物を作りだしている。
これらの中で炭素を含むものは、80%にもなる。
つまり炭素こそ化合物づくりのキングであり、クイーンである。
同じ炭素と水素からできていても、原子の数と繋がり方が異なれば、全く異なったものとなる。
例えば、天然ガスの主成分メタンとなったり、ガソリンの主成分であるヘキサンや、また人参の色素カロテンにもなり、プラスチックのポリエチレンにもなる。
私たちが生きるために食する植物、暑さ寒さに対しての衣服(綿・麻…)、文明を支え伝える紙など、これみなセルロースという炭素化合物である。
砂糖にしても、炭素と他元素の結びつきや数を変えるだけで、構造変換し、いろんなモノをつくることができる。
甘い砂糖の一部を変えてノンカロリーに、また砂糖と酢酸を化合させて苦い味を作ったり、砂糖と硫酸を化合させて胃腸薬に、はたまた硝酸と化合させれば爆弾にもなる。
余談となるが、砂糖は、中世の神学者トマス・アクィナスが、砂糖は薬であり、食品でないとしたことで、ラマダンの断食の時に食べてよいものとなり、食品として飛躍することになったのである。
この薬とされた砂糖の為に、ヨーロッパにおいてバッハ、セルバンテス、プッチーニ、セザンヌ、エジソンなどが糖尿病患者となったことは、歴史の皮肉である。
今の日本も、糖尿病予備軍は2,300万人にもなり、50年前の40倍である。
つまり人は、食に関し食べるというアクセルはよく踏むが、食べないというブレーキはあまり踏まないのである。
現代の複雑性は、炭化水素の集まりである石油の幅広い活用により、生活の利便性を高め文明開化を享受していることにある。
その為に、私たちは1兆リットルもの石油を掘り、燃やし、消費している炭素社会にいる。
しかしこの炭素が、地球の温暖化の大きな要因とされている。
この要因に対処する一方策として、木々、緑を使うカーボンオフセットがある。
薬としての砂糖が、食品として使用され過ぎて糖尿病をふやしている轍(てつ)は踏みたくないものである。
この炭素社会に炭素で対処する炭素マネジメントである。
新しいカーボンオフセット構造をつくりたいと祈念する今日この頃である。
理事長 井上 健雄