NPO法人イー・ビーイング
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生物多様性のありがたさ

 今、地球上に異なる種が190万種(3/4が昆虫)存在している。
 しかし実際は、3,000万種はいると言われている。
 この多様な種が、毎年0.01〜0.1%絶滅している。
 おおまかに2,000万種とすると、毎年2,000〜20,000種が、絶滅している。
 1日あたり5.5〜55.8種がなくなっている。
 このままだと22世紀には、鳥類で12%、哺乳類で25%、両生類で32%絶滅すると予測されている。
 これでいいのだろうか。

 ここで、生物多様性による生態系サービスによる恩恵を記したい。
 まず「食」について、キャベツ、キュウリ、トマト、ブロッコリー…等々にお世話になっている。
 おいしいとか収量を多くするために、選抜や近親交配をさせる。そうすると、近交弱勢と言って、病気にかかりやすくなったり、長期にわたって高い生産性を保てなくなったりするので、野生種からの遺伝子導入が必要になる。

 バナナは東南アジアの森林が原産地であるし、小麦の原産地は中央アジアのコーカサス地方からイランにかけてである。
 そうであるのに、バナナはラテンアメリカやアフリカで大きく生産されている。小麦は世界中で栽培されている。
 しかし原産地と栽培地が異なると、それらの栽培国の為に原産国で野生種を維持することは、大変困難となっている。
 こうした遺伝子の保存等は、世界的な課題となっている。

 「衣料」だって、木綿や綿、蚕さんから絹、羊さんからウール、皮の服は牛さん・豚さん…、化学繊維のナイロンだって石炭・石油は、もともと植物や木の遺骸である。
 私たちは生物で身を飾り、生きている。

 それなら「住」は?木の家、柱位かな。
 とんでもない。コンクリートだって石灰の殻をもつ生物たち、有孔虫、サンゴ、貝、ウニ、石灰藻などの堆積物を利用している。
 それじゃ鉄筋は違うだろう!
 いいえ、鉄鉱石もシアノバクテリア(ラン藻)が作ったと言える。
 太古の海は大量に鉄が溶けていて、シアノバクテリアが光合成により酸素を発生させると、酸素と鉄が反応し、酸化鉄となって沈殿し、鉄鉱石を生成させたのだから。

 つまり「食」「衣」「住」すべて、私たちは生物多様性に、おんぶにだっこで生きていると言える。
 その上、花や緑を見て美しいと感じたり、木製の胴に羊の腸を張って、それを馬の尻尾でこする、美しい音色を楽しむバイオリンだって、生物からできている。
 薬も、キナからキニーネ(マラリアの薬)、イヌサフランからコルヒチン(痛風の薬)、ニチニチソウからビンブラスチン(抗がん剤)、青カビからペニシリン(抗生物質)、放線菌からストレプトマイシン(結核の薬)など…ができている。

 生物多様性の恩恵なしに、私たちの生も、癒しも、楽しみも成立しない。
 こんなにも生物の多様性にお世話になりながら、種の絶滅を見逃していては、ヒトの未来もない。
 みんなで身近な所から、自然を守る活動に力を注ぐべきである。
 これは喫緊の課題である。

理事長  井上 健雄

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