今月の言葉
2007年バックナンバー
12月
11月 卷土重来
10月 ダイバーシティとしてのE-Being
9月 生涯学習
8月 サムシングニュー
7月 ライジングスター
6月 駱駝か獅子か子供か
5月 混迷の時こそ遠くの星を見て
4月 不都合な真実
 ―内なる自然版―
3月 朗報(U)
2月 正直は最良の政策
1月 年頭の挨拶
 ダイバーシティ
新年の特別ご挨拶
 2007の信号を読む

 師走です。なんか一年中師走だったのに、また師走という感じです。
 皆様、如何な一年でしたか?
 今年の掉尾は、格差、教育、まちづくりの三点を、志を軸にまとめたい。

 いま「格差」について喧(かまびす)しい。貧富の格差、情報格差、食糧・エネルギー資源格差…
 特に貧富の格差は誰でも反対だという。そうしたら儲けなくても良いかというと、そうでもないらしい。
 誰かが儲ければ、誰かが損をするのが世の中だ。右肩上りの花見酒に酔っていれば、皆が儲かるように思う。しかし醒めれば、バーンとバブルが弾ける。先の日本のバブルや米サブプライム問題を見れば分かりそうなものである。

 資本主義社会・自由主義社会は、格差を認めて成立した社会ということを認識すべきである。
 だから格差にどう手を打つかがソリューションなのだ。
 「格差」「儲けたい」は一つの事象の裏表だと認める姿勢こそがポイントで、いいとこ取りでは社会は成立しないのである。

 教育として、エコツアー、体験農業といろいろ流行っている。
 しかしイモ掘りの現実はこんなものもある。農家の人が一度抜いたイモを埋め戻して、それを抜く‘イモ掘り’と称するものが喜ばれている。
 これをエコとか体験とか言うのは待って欲しい。

 また「まちづくり」「都市計画」という言葉も氾濫している。
 が、大都市ではほとんど成功例を聞かない。
 首都東京も、京都からの遷都の構想もない単なる引っ越しだから、雑然たる高層ビルが諸所乱立し、道路計画も不十分で、奇っ怪な姿を曝している。
 「水の都大阪」のフレーズも淋しい。使うならベネチアを倣い、湾岸や河川の高度活用を考えるべきである。

 都市計画について目を世界に転じると、ロンドン、パリ、ベルリン、サンクトペテルスブルグなどやはり素晴らしい。
 お隣の中国だって、環境問題や汚職、不正と山積する中で、北京、上海(その他広州、青島、大連などなど)の都市計画は、100年後の世界都市を目指している。北京オリンピック、上海万博の後の経済的クラッシュを心配する声もあるが、この両都市だけを眺めても、それは違うぞという感慨が起こる。

 こうして観てくると、日本に欠けているのは、思想と志である。
 現代的課題としてユーチューブの志に触れてみよう。
 ユーチューブは著作権侵害訴訟や、グーグル16億5,000万$での買収等、話題が尽きない。
 この訴訟についてのコメントであるが、英国BBCなどはブランドを傷つけない限り問題視しないと発表している。

 この背景には、ユーチューブは、大手マスコミに握られたブロードキャストを個人に取り戻すものとして、またブロードキャストを個人が自己の思想をのせてDIY化するツールとして創造されたことを理解しているからである。
 情報のカスタマイズの道具として、ユーチューブを世に提供する志を高く評価したからであろう。
 日本のIT長者には、拝金以外、志はなかったのである。ホリエモンにこの思想性があれば、もう少し展開は異なったであろう。

 こうした意味において、格差問題も社会的に出て来ざるを得ないという前提で、弱者に対する配慮を構造としてビルトインしておくことが必要なのである。
 エセイモ掘りで満足する親、子供、学校の欺瞞に真に対峙し、100年教育の大計を問うべきなのである。
 都市計画においても、100年後とか、その都市の世界の中でのしっかりとしたレーゾンデートル(存在価値)を問うべきなのである。

 あらゆることにおいて、深い洞察のもと、数百年後までもを視野に入れたグランドデザインが必要なのである。
 このことを私は「志(こころざし)」と呼びたいのである。
 ちょいちょいいいとこ取りではサステナブルではないし、醜悪な結果しか出ないだろう。

 私の思い過ごしかもしれない。
 しかし現代の(日本の)人々は、目先の答えありきのようだ。言い換えれば、問いの答えじゃなく、問いの本質を問い直すことが忘れ去られているのだ。

 社会にとってとか、何のためにするのか、はたまた時代がかっているようだが、大義は、とかを問うべきなのである。
 これらこそを、私は「志」と言っている。今一番クールなんは、「志」だと思います。

 この一年を締めくくるにあたり、再度「志」−2006年2月−に言及した。
 私どもの志が、少しづつでも育ちつつあることを祈りながら…


理事長  井上 健雄
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