Land-Eco土壌第三者評価委員会
Land-Eco 土壌第三者評価委員会
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土壌研究会News5 (1)
シンポジウム「土壌汚染対策法改正による影響と土壌第三者評価の役割」
2010年6月22日(火) Land-Eco土壌第三者評価委員会シンポジウム
<パネリスト>
嘉門 雅史 先生(独立行政法人 国立高等専門学校機構 香川高等専門学校 校長)
増田 健郎 先生(みずほパートナーズ法律事務所 弁護士)
久保 幹 先生(立命館大学 生命科学部 生物工学科 教授)
川地 武(土壌第三者評価委員会 副委員長)
<ファシリテーター>
菅原 正孝(土壌第三者評価委員会 委員長)
菅原先生
 ただいまより、シンポジウム「土壌汚染対策法改正による影響と土壌第三者評価の役割」を始めます。
 まず、パネリストの先生方を紹介します。独立行政法人 国立高等専門学校機構 香川高等専門学校 校長 嘉門雅史先生、みずほパートナーズ法律事務所 弁護士 増田健郎先生、立命館大学 生命科学部 生物工学科 教授 久保幹先生、土壌第三者評価委員会 副委員長 川地武先生です。
 本日は、4クールでの展開を予定しております。第1クールは、前半でご講演いただいていない嘉門先生、増田先生、久保先生に、自己紹介を兼ねて問題提起をしていただきます。第2クールは、「土壌汚染対策法改正による影響と土壌第三者評価委員会の役割」というテーマで議論したいと思います。第3クールは、「豊洲の土壌汚染問題」についてご意見をいただきます。最後に第4クールとして、ひとことずつ本日のまとめをしていただきます。
 それでは、さっそく第1クール「自己紹介と問題提起」に入りたいと思います。まずは嘉門先生、よろしくお願い致します。
嘉門先生
 私は改正土壌汚染対策法の法律の作成には直接関与しておりませんが、搬出汚染土壌に関する政省令とガイドラインの原案の作成議論に参加しております。
 ガイドラインにつきましては、3種類の暫定版(案)が6月9日に環境省から出たばかりです。調査及び措置に関するガイドライン暫定版(案)、汚染土壌の運搬に関するガイドライン暫定版(案)、汚染土壌の処理業に関するガイドライン暫定版(案)の3種類で、今、都道府県と政令指定都市の環境部局で検討しているところです。あくまで暫定版(案)ですので、まだ一般に公開してはならないと環境省から言われております。今後さらなる精査をして改訂が加えられ、しかるべき時期に公開される予定です。
 今日はそれに関する話題で、貢献できれば幸いです。
菅原先生
 ありがとうございます。次に、増田先生、よろしくお願い致します。
増田先生
 私は廃棄物問題を長年、手掛けてきております。大阪弁護士会で廃棄物部会を立ち上げた時に、初代部会長を務めました。その後、日本弁護士連合会の公害対策・環境保全委員会でも廃棄物部会ができ、部会長を務めさせていただきました。
 その中で、有害な廃棄物の問題や不法投棄対策など、土壌汚染問題に関わる事件も多く、土壌汚染問題も手掛けるようになりました。
 我々弁護士が扱う事例は、限界がはっきりしない事例が多いです。土壌汚染対策法が適用されるのか廃掃法が適用されるのか、廃棄物の問題なのかリサイクルの問題なのかなど、ほとんどが限界事例です。すぐに分かるような事例は裁判にはならないので、当然なんですが、その中で現実的な解決をするのには結構、苦労しています。
 話は変わりますが、皆さんもご存知のとおり、日本弁護士連合会では中立公正の立場から色々な研究活動や調査をして、シンポジウムの開催や、政策立案の提言をさせていただいております。提言は数年後に実現していることが多く、成果を感じております。
 今年は廃棄物問題、特に不法投棄対策に関するシンポジウムがございまして、その準備のために、この週末からアメリカのスーパーファンド法の調査に行ってまいります。平成8年に調査に行ってからだいぶ経ちますので、どう変容したのか、どういう状態なのか、我が国に導入するとしたら何をどう変えたら良いかなど、EPAや汚染サイトを何箇所か尋ねまして、成果を得たいと思っております。
 我々弁護士は、裁判の中で実績を示していくことに意味があると思っています。空理空論に終わらないように、事件の中で活かしていくように日々、努力しています。
菅原先生
 ありがとうございます。次に、久保先生、よろしくお願い致します。
久保先生
 私は環境微生物を専門としており、その立場からお話ししたいと思います。まずは簡単に私の研究を紹介させていただきます。土壌汚染ではガイドラインにしかなっていませんが、バイオレメディエーションによる石油汚染の浄化を研究しております。
 この写真は、今アメリカで起きているメキシコ湾の石油流出事故です。4月20日から続いており、恐らく世界中でみても過去最悪の事故になるのではないかと思います。他にも水路や土壌など、色々なところで石油汚染が起こっています。
 現在、石油汚染土壌がどのように浄化されているかといいますと、例えば焼却です。この写真は、私が共同研究をしているある企業のプラントです。ここから土を入れて燃やし、ここで粉塵が出るのを抑えています。浄化された土壌は採石場に埋め立てられています。栃木県にある施設ですが、ほぼフル稼働だと聞いております。問題は、このような処理をしますと2年間は草が生えないということです。これは有機物が完全に焼却され、微生物も全部死んでしまうからです。
 物質循環を考えると、太陽光で植物が光合成をして有機物を作ります。動物はそれを食べます。落ち葉や糞尿などの有機物を土の中の微生物が分解して肥料になり、植物が育ちます。ところが土壌汚染がありますと、最初に影響を受けるのがこの微生物で、そうなると物質循環全体がうまくいかなくなってしまいます。
 私どもはこの環境微生物を専門にしており、特に石油汚染について、微生物を用いた浄化をしようと研究を進めています。また微生物を調べることによって、土壌環境や汚染の浄化程度を評価しています。
 油の中でもベンゼンは比較的分解されやすいのですが、ドデシルシクロヘキサンなどのシクロの長い油(シクロ環の側鎖に長鎖アルキル基が付いたもの)はなかなか分解されません。我々はそのような油を分解する石油分解菌を採取しております。例えばロドコックスやゴルドニアなどです。土壌に添加する製品には、1mLあたり100億〜200億の微生物が入っています。
 もう一つ我々の特徴は、微生物を入れるだけではなく、しっかりとモニタリングするということです。本当に浄化されたのか土壌診断する技術を研究しており、土の中からDNAを取り出して、土1gの中に微生物が何匹いるかを2時間ぐらいで検出する装置を作りだしました。ひとくちに土と言ってもシルト、粘土、砂などいろいろあり、農地のようなシルトは1gに10億を超える微生物がいます。ところが粘土は5億、砂になりますと1~2億しかいません。総炭素量で見てもシルトは多く、粘土や砂は少ないです。ですから砂や粘土はバイオレメディエーションの効果が出にくいですね。微生物で浄化する場合は、同じ汚染でも土によって浄化の仕方を変えていかないと、なかなかうまくいきません。
 そこで我々は、炭素(C)と窒素(N)の比率などをコントロールしながら浄化していく技術を研究しております。例えばCN比5前後で非常に効果が出やすいので、砂などのCN比が小さいところであれば炭素を入れます。このような基準を設けてきっちり微生物を管理することによって、効率良くバイオレメディエーションができるように技術構築をしております。
 またバイオ浄化では、実験室ではうまく浄化できても、実際に浄化しようとするとうまくいかないことがよくあります。これはバックホーを使って作業することが多いので、微生物と汚染土壌がちゃんと混ざっていないことが一つの原因です。そこで汚染土壌をしっかり攪拌すると同時に、土の量とそれに対する栄養塩、炭素、微生物の量をきちんと管理できる装置を作りました。このような装置を使えば、実験室とほぼ同じ結果が出ます。微生物のばらつきを調べると、バックホーを使った場合は土1gあたり2200万〜1億8400万のばらつきがありますが、装置を使った場合は土1gあたり2億4400万〜2億8000万と、ばらつきはかなり小さいです。5000ppm程度の汚染土壌であれば、1000ppm以下にするのに2か月程度です。
 現在、投与菌株について環境省と経産省の環境影響・安全性試験を受けており、今までに2回ほど審査を受けまして、7月には通していただけるのではないかという状況です。また原位置でのバイオレメディエーションや、微生物数を保持するシステムも研究しております。
菅原先生
 ありがとうございました。
 川地先生、何か先ほどのご講演に付け加えることなどはありますか。
川地先生
 久保先生の話をお聞きして、少し補足します。
 豊洲では原位置でのバイオレメディエーションと、土を掘削してプラント内でのバイオレメディエーションと両方行う予定です。特に原位置のバイオレメディエーションについては、モニタリングで管理しながら浄化しなければならないという制約の中で、いつまでに浄化すると期限を決めてしまうと、無理が出てくるのではないかと思います。地下水揚水についてもそうです。海岸埋め立て地ですから、間隙水に塩分も含まれていると思いますし、原位置とプラント内では別に考えなければなりません。
 今それを実験しておられて、プラント内のものは非常に順調にいっているという中間発表が東京都からありましたが、原位置のバイオレメディエーションでどの程度まで期待できるか、注目しています。
 いずれにしても、透明性や信頼性を高めるために、どこかで第三者評価が必要ではないかと思います。
菅原先生
 ありがとうございました。豊洲の件についてはまた後で議論したいと思います。
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