Land-Eco土壌第三者評価委員会
Land-Eco 土壌第三者評価委員会
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評価事例2 訴訟案件における浄化の適切性評価
最終評価結果
調査・対策の質 部分的に適切ではない
 調査は概ね適切に行われていますが、砒素の濃度や分布状況から、自然由来であるとする推定は誤りでした。また、調査結果の見落としや複数の調査機関間での伝達ミス等があり、調査担当者の不注意がうかがわれます。
 浄化工法については、砒素の特性や地質から考えて、慎重に適用するべきでした。また、施工管理や浄化効果の確認も不十分で、浄化後に採取したボーリングコアの状態からも、確実に浄化されたとは断定できません。
 さらに、調査・浄化について見直す機会が何度もあったにもかかわらず、見直しや是正は行われませんでした。よって、浄化前の調査及び浄化は部分的に適切ではないと評価しました。
※本評価は調査についても検討を加えた上で、特に砒素の浄化の質について評価を行いました。また、土地購入者が最終的に行った浄化については、評価を行っていないため、Land-Eco判定は行いませんでした。
一つの浄化工法をどのケースにも一律に適用することの危険性、施工管理やリスク認識の重要性、汚染原因や汚染機構等の考察の重要性を指摘することで、安易な浄化工事に警告を発することができました。また、より客観的で公正な裁判に寄与しました。
調査・対策の概要
対象地 化学工場跡地(評価時はマンション建設中)
汚染物質 砒素(土壌)その他重金属
対策工法 原位置土壌洗浄に類する工法
 対象地は化学工場であり、工場の閉鎖と土地の売却に伴い調査を実施しました。その結果、主に砒素による土壌汚染が発見されたため、土地所有者は浄化を行った上で、土地を売却しました。
 しかし、購入者が改めて土壌調査を実施したところ、敷地全体から基準値を大幅に超える砒素が発見されたため、係争となりました。
 購入者は最終的に汚染土壌の掘削除去を行い、現在はマンションとなっています。
評価のポイント
Point(1) 浄化工法は適切であったか
 一般的な原位置土壌洗浄は、本案件のように重金属やシルト分が多い地質には適用できませんが、本案件で用いられた工法は、改良により重金属やシルトであっても浄化できるとされていました。
 しかし、重金属やシルトにおける実証実験等の資料がなく、数件の施工例も汚染物質やその濃度、地質等の資料がないため、本案件との比較ができませんでした。
 そのため、施工管理を十分に行うなど、慎重に実施するべきでした。
Point(2) 浄化の設計・管理は適切であったか
 浄化の設計・管理には、不適切な点がいくつかありました。
 まず、洗浄水の影響範囲よりも広い範囲で浄化を行っているため、十分に浄化効果が行き渡らなかったと考えられます。
 施工中の水質調査では、土壌と比較して極めて高濃度の砒素が何度も検出されており、この時点で土壌調査結果や汚染原因を見直すべきでした。
 浄化の終了にあたっては、地下水の濃度が増減を繰り返しているため、終了の判断を慎重にすべきでした。また、効果確認調査を浄化終了直後に行っているため、浄化効果を適切に把握できなかったと考えられます。
 さらに、砒素がどこに、どのように、どれくらい回収されたのか、提出された資料からは一切不明であり、この点でも施工管理が不適切であると評価しました。
Point(3) 十分に浄化できていたか
 浄化終了時の効果確認調査で採取されたボーリングコアを視察したところ、所々に粘土の塊が残っており、盛土部では洗浄による泥分があまり付着していませんでした。このことから、土壌が十分に洗浄されていないと考えられました。
 浄化効果確認調査では基準値未満となっているものの、浄化終了直後に調査を行っているため、その後の嫌気状態への変化や地下水の流入等、地下環境の変化によって、一時的に溶出しにくくなっていた砒素が再び溶出したと考えられます。
Point(4) 土地購入後の調査は適切であったか
 土地購入後の調査では、4社の調査により、いずれも敷地全体にわたって砒素が検出されており、高濃度の箇所はほぼ一致していました。
 また高濃度の箇所は、浄化中に地下水濃度が高かった箇所と一致しており、浄化後に一部土壌入れ替えを行った箇所では基準値を下回っていました。
 以上より、土地購入後の調査は適切に行われていると判断しました。